NNNドキュメント08 自死救出 東尋坊 命の番人

もう二年半ほど前、NNNドキュメント08で「自死救出 東尋坊 命の番人」という番組があっていた。

http://www.ntv.co.jp/document/back/200809.html

(以下はその番組を見た時の感想)



東尋坊は、とても景色の美しい場所のようだが、この十年で四百名以上が自殺している場所でもあるらしい。

茂幸雄さんという、東尋坊で自殺防止のボランティアをされている人の様子を番組では追っていた。

茂さんは、元警察官だったそうだが、まだ定年の前に、追い詰められて自殺しようとしている夫婦とある時に出会い、止めて、いったんはその夫婦は思いとどまって帰ったが、そのあとどんな役所を訪れても生活保護を受けれず、「死ぬならどうぞ」とまで言われて、どうにもできずに最終的に自殺したらしく、最後に茂さんに感謝の旨と自分たちのような人間が二度と出ないような社会を望んでいる旨を綴った手紙を送られたそうである。

それから、再就職の誘いを断って、茂さんはずっと東尋坊で、ひとりでたたずんでいる人の様子を見守っては、話しかけて、相談に乗ったり、自殺を思いとどまらせてきたそうだ。

その様子を番組でも映していたけれど、一見元気そうな若者が、実はさらに話しかけていくと、涙ながらに苦境を話し、あと一、二時間、そのまま誰とも話さなければ身を投げていただろうとも話しているのを見ると、茂さんの人の様子を察する能力というか智慧は本当にすごいなと感嘆した。
ぱっと見ただけではなかなかわからなそうな、その人の苦しみを、後姿を見ただけで理解して、進んで話しかけて、しばらく話して心を開かせて解かせていくというのは、これはもう菩薩の業なのだと思う。

茂さんの活動は、どうしても年間に赤字になるらしく、自治体からはぜんぜん支援はないようで、民間の有志や企業からの支援でなんとかやっているそうだ。
茂さん自身も、東尋坊のすぐ近く御餅屋さんを開きながら、活動をされているようである。

つまらない天下り官僚に巨額の退職金を支払うよりは、よほどこうしたボランティア活動にこそ支援の資金を投入するべきと思うのだが、いったいどうなっているのだろう。
この国は本当にどうしようもなく腐っているのだろう。
一部に、草莽の菩薩がいるおかげで、なんとかなっているのだと思う。

茂さんが、

「自殺は自己責任ということになってしまっているが、本当はそうではない、社会的な責任だ。
自己問題ではなくて、社会的な問題だ」

という内容のことを、お話されていて、本当にそのとおりだと思った。

派遣労働などで、どうにもならずに、追い詰められている若者が今は多いのだと思う。
ギャンブルなどで身を持ち崩して、自殺しようとする人も多いのかもしれないが、その人たちも死んで良い命であるはずがない。
やはり最後の一線を踏みとどまらせて、再起再生のチャンスを与えるように、社会全体で本来ならばいろんな手段を講じていなければならないのだと思う。

にしても、私がよく知らないだけで、本当に生き死にの厳しい現場というか、自殺のぎりぎりのところに立っている人や、踏みとどまらせようとする人たちがいるのだなあと、番組を見ていて思った。
私も、何かできることがあればしたいものだが。


(追記)

にしても、この番組の感想、ネットを検索してみたら、うっとうしいとか偽善だとかいう感想の人もいるらしい。
人の受け取り方はいろいろだろうし、自殺を決意している人を止めるというのは本当に微妙な難しい問題なのだろうけれど、こういう感想を持つ人がいるとは、なんだかますます悲しい世の中だと思った。
茂さんという方も、ずいぶん苦労が多いのだろうなあと思う。