ドキュメント番組 「失われた大隊を救出せよ」 442連隊

今日、以前録画していた、「失われた大隊を救出せよ」というドキュメント番組を見た。

http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/3115177/index.html


第二次世界大戦中に活躍した、アメリカの日系人部隊・442連隊についてのドキュメントである。


442連隊は、映画「ベストキッド」に出てくる空手の達人のミヤギが若い頃所属していた部隊として言及されていたこともあり、その名前は以前から知っていたものの、そこまで詳しくは知らなかった。
加えて、山崎豊子の「二つの祖国」にも出てきて、日系人強制収容を背景に、アメリカ人として認められるために多くの若者が志願したということぐらいを知っていたに過ぎない。
勇名をとどろかせ、アメリカ陸軍の中でも屈指の精鋭部隊として、ナチスドイツの軍隊と闘って活躍した、という漠然としたイメージぐらいである。
しかし、このドキュメント番組を見て、その戦場の悲惨さに絶句せざるを得なかった。


442連隊の勇名を特にとどろかせたのは、フランスのボージュの森での激戦で、包囲されていた他の米軍の部隊の救出を果たしたことによる。


442連隊は、敵軍に包囲された友軍のテキサス大隊を救出し、たしかに211名の人命を救いだした。
しかし、そのために442連隊は、350名以上の死傷者を出した。


その戦場でのあまりにも過酷な体験は、今もって90代を越した生存者にとって、言葉にならない苦悩を心に刻みつけている様子が番組ではとりあげられていた。


もともと、師団長のダールキスト少将が、自分の判断ミスで敵がいないと過信して進軍させたテキサス大隊が敵軍に包囲され、他の連隊で救出を試みたものの救出できず、442連隊に命令し、自分の失敗を糊塗するためにも死にもの狂いで救出させたということだったらしい。


そもそも、なぜ442連隊が結成されたかというと、ルーズベルト日系人強制収容を行ったことへの批判をかわし、日系人自身が積極的に志願してアメリカに忠誠を尽くしている姿を見せることで、アメリカ批判のプロパガンダをつぶすという政治的狙いがあったことも番組では指摘されていた。


また、番組では、従軍牧師のヒロ・ヒグチが、ひとりひとりの兵士の顔写真と名前を記録に残していたことと、手紙の中で狂った指導者のためにいたずらに無駄な犠牲を出しているだけではないかという懐疑を書きこのしていたことが紹介されていた。


「果たして今回の戦争は意味があったのだろうか。
一歩進むごとに泥と雪と地獄を垣間見る。
我々の勝利は血にまみれていることを知ってほしい。
おびただしい命が失われた戦争は、戦後により良い世界を築かない限り、意味がなくなってしまう。
民族に関係なく、人間性のみが大切にされる世界を、私たちはつくっていかなければならないと思う。」


という、ヒロ・ヒグチの手紙のメッセージは、重いものだと思う。


442連隊の兵士のひとりひとりは、自分の家族たちが収容所から解放されるため、アメリカでの日系人の待遇や地位が改善するために、英雄的な奮戦をしたのだろうけれど、アメリカ政府にとっては、逆プロパガンダのため、また都合の良い手駒として使われただけだったのだろうか。
そう考えると、なんとも胸が痛むものである。


日系人の前途のことをろくに思いやりもせず無謀な戦争に突っ込んだ日本の当時の指導者たちも、そしてまた人種差別から日系人のみ強制収容し、そのうえでプロパガンダに利用するために442連隊をつくり、死地に追いやっていったアメリカの指導者たちにも、なんとも言えぬ気持を抱かざるを得ない。


すぐれた、良いドキュメント番組だったと思う。