佐田秀 「坂本是将ぬしの こひによりてよめる長歌」


佐田秀 「坂本是将ぬしの こひによりてよめる長歌


蜻島(あきづしま) 日本国(やまとのくに)は 天地(あめつち)の 神相うつのひ 皇祖神(すめろぎ)の 御霊(みたま)扶(たす)け 物部(ものゝべ)の 人相集(ひとあひつど)ひ
  天皇(すめろぎ)に 仕(つかへ)奉(まつ)る 国そ 恐(かしこ)きや 
 
  吾大君(あがおゝきみ)の 行知(しろしめ)す 天下(あめした)に 国はしも さはにあれとも 城はしも 多(さは)くあれとも
  馬(むま)の爪 筑帋(つくし)の国は 天地(あめのした) 日月(ひつき)と共に 足(た)りゆかむ 神の御面(みおも)と  国毎に
  神の名負(おひ)し 御名(みな)ことに  国の 名かゝす 其中に 別(わ)き細き 白縫(しらぬひ) 肥前国(ひぜんのくに)の
   玉勝間(たまかつま) 島原ノ 城ハも 天皇(すめろき)の 遠朝廷(とほのみかど) 敵(あた)守る 押塞(おさえ)の城(き)そと 東(あづま)の幕府の
  貴くも 仕たまひ 畏(かしこ)くも 依賜(よさしたま)へれ

  負持(おひもち)し 国しき守(も)らす 吾君の 遠つ神祖(かむおや)の 命(みこと)ハも 東照(あずまてる) 神尊(かむのみこと) に 内部(うちのへ)に
  つかへまつり 外部(とのへ)にたち 侍(はべ)らひ  不奉仕(まつろはむ) 国を治むと 千早旧(ちはやふる) 人をやはすと
  御軍(みいくさ)の 真前(まさき)たち  かへりミす  御楯(みたて)となりて ゆゝしくも  奉仕(つかへまつ)れる 丈夫(ますらお)の
  命にしあれは そこはくの国 負持し ここバも 恵玉(めぐみたま)へれ  
  生ませる御子(みこ)の かす/\  継(つぎ)の木の 弥嗣継(いやつぎ/\)に 木綿花(ゆふはな)の 栄えいまさひ
  御民(みたみ)をら めつみ玉へれ

  奉仕(つかへまつ)る 臣(おみ)も奴(やっこ)も 布(しき)ませる 国も県(あがた)も 万代(よろづよ)に  かくしもかと 御仁政
   仰てまつに 迷言(およづれ)の 狂言(たはごと)とかも 出(いづ)る日の 暮ぬること 照月(てるつき)の 雲かくること
  行水(ゆくみづ)の 留(とゞ)めもかねつ もみぢばの 過ましにけれ
  昼ハも歎(なげ)かひくらし 夜ハも いき衝明(つきあか)し なけゝとも しるしなみ
  曇りよの 迷へるほとに 有職(いうそく)の 人のこと/\ 言計(いうはかり) はかり  定めて
  鳥かなく 東国(あづまのくに)ニ  国ハしも さはにあれとも 君ハしも 多くませとも
  衣袖(ころもで)の 常陸(ひたち)の国ハ 武士(ものゝふ)の 武甕槌(たけみかづち) 大神(おゝかみ)の  鎮坐(しづまり)います くしき国  畏(かしこ)き国 
   くハしき国の コト/\ 布坐(しきませ)る 水戸君ハも 古への實事(まことのこと) をしぬはし
 
  血速旧(ちはやふる) 神を いつかし 天下(あめのした) 国のソキ まつろハぬ 蝦夷(えみし)の輩(やから)を  はき清め
  言向(ことむけ)和(やは)し 敷島(しきしま)の 日本魂(やまとこゝろ)を 天皇辺(すめらべ)に 極めつくし 剣太刀 (つるぎだち) いよよ磨(みがき)置て
  大将の 御楯とならむと 言立(ことだて)し 清き その名は 天地(あめした)に 多(さは) 響(とよめ)き 足つる 
  丈夫(ますらを)の  たけき君なれ
  生ませる 御子(みこ)ハ ことさらゆゝしく 智(さと)り賢し 恐(かしこ)きや 
  その御子(みこ)をしも 山たつの 迎へ参入越し 嗣(つぎ)の樹の 継て立つれ

  曇りよの 明ゆくごとく 朝月夜(あさつくよ) 赤き心を 人皆の つかへまつろふ
  そを見れば  あやに忌(つゝ)しみ 此を思へハ弥(いよゝ) 乏(とぼ)しみ

  くなたふれ 蝦夷(えみし)かともの 千万の 軍あともひ 大船の 艫(とも)ゆも 舳(へ)ゆも
  火矢はなち  をゝしきほひて おほゝしく  今もよせてハ 天地(あめした)の神を こひのみ

  御軍(みいくさ)の 真前(まさき)にたち 焼刀(やきたち)の 手柄(たかみ)押ねり 白真弓(しらまゆみ)靫 (ゆき) 取負て 神風の
   いふき迷ハす 天空の きらふ火中ゆ 挨矢(さつや)もち 海に 射(い)しつめ
   打さため 払ひ平らけ 日本(ひのもと)の 日本国(やまとのくに)の 神稜威(かむいつ)の 畏き事の 丈夫(ますらを)の 敵(あた)す 
  ねやを  天雲(あまくも)の 向伏極(むかふゝすきは)み 天地(あめした)の 至れる限り 蝦夷(えみし)等の  聞迷ふまて
  たふれらる 見おつる迄に 神風に 伊吹(いぶき)めつらし 天空に いひはふらし 
 
  海行(ゆか)ハ 水漬(みづく)屍(かばね) 陸ゆかハ 草生(くさむす)屍(かばね) 天皇(すめらぎ)に つかへまつり
  吾君(あがきみ)の 御楯(みたて) とならむと 思ひきわめ羊蹄(し)