五高寮歌

(巻頭言)

仰(あお)げば星斗爛煥(せいとらんかん)として
永遠(えいえん)の真理(しんり)を囁(ささや)く
頭(こうべ)を巡らせば蘇山(そざん)遠々(えんえん)として
我等若人の情熱をそそる
天地(てんち)の恵み豊かなる肥後の一角(いっかく)
立山(りつざん)の麓(ふもと)白川(はくせん)が畔(ほとり)
これぞ我等五高健児(けんじ)の地なり
いざや舞わんかな狂わんかな歌わんかな
我等が剛毅木訥(ごうきぼくとつ)の調べを
武夫原(ぶふげん)頭(とう)に草萌えて
一(あいん) 二(つばい) 三(どらい)



「武夫原頭に」(旧制五高寮歌)

恵利武作詞・東京音楽学校作曲


武夫原頭(ぶふげんとう)に草萌えて
花の香(か)甘く夢に入(い)り
竜田(たつだ)の山に秋逝(ゆ)いて
雁(かり)が音(ね)遠き月影に
高く聳(そび)ゆる三寮(さんりょう)の
歴史やうつる十余年

夫(そ)れ西海(さいかい)の一聖地(いっせいち)
濁世(だくせ)の波を永遠(とわ)に堰(せ)き
健児が胸に青春の
意気や溢るる五高魂(ごこうこん)
その剛健の質(しつ)なりて
玲瓏(れいろう)照らす人の道

時潮(じちょう)の巡りたゆみなく
移りてここに十年の
思いや狂う湖北(こほく)の地
断雲(だんうん)乱れ飛ぶ所
斬魔(ざんま)の剣(つるぎ)音(おと)冴えて
スラブの末路今ぞ見る

時(とき)艱(かん)にして義(ぎ)を思い
塵世(じんせ)に節(せつ)を偲(しの)ぶかな
ああ新興(しんこう)の気(き)を負いて
浮華(ふうか)の巷(ちまた)にわれ立てば
思いは馳(は)する木訥(ぼくとつ)の
流風(りゅうふう)薫る銀杏城(いちょうじょう)

さらば我が友叫ばずや
時と人とを諭(さと)すべく
見よ龍南(りゅうなん)に一道(いちどう)の
正気(せいき)ありてぞ日の本の
青年の名に力あり
二十世紀に光あり
二十世紀に光あり