漫画の田近康平(福田ますみ原作)『でっちあげ』を読んだ。
いわゆる「福岡市「教師によるいじめ」事件」についての作品である。
「福岡市「教師によるいじめ」事件」は、2003年に起こった事件で、当初アメリカ人の血を引く小学生の児童を「血が穢れている」などと言い、耳を引っ張ったり殴ったりして怪我をさせていじめた教師がいたということで裁判になり、マスコミが大きくそのように報道して大きな問題となった。
しかし、その後、被害者とされる児童やその親の発言が虚偽で事実に反することが次々に明らかになり、そもそも児童はアメリカ人の血を引いてもいないことが明らかになり、「殺人教師」と世の中から指弾された教員が実は無実であったと最終的には教育委員会も認定したという事件である。
私も当時うっすらとそんな事件があったことは覚えているし、のちにそれらが事実無根だったということを聞いたのもうっすら覚えているが、あまり詳しく知らなかったので、この漫画化されたノンフィクション作品を読んで、はじめて詳しく事の次第を知ることができた。
主人公の教員は、最終的には復職できたし、教育委員会からも無実と認定されて名誉が回復したものの、教育委員会の無実の判定が出るまで十年もかかっており、その後もマスコミが拡散したイメージを抱き続けている人から不当な誹謗を受けることがあるそうで、なんともひどい話と思った。
また、誤った正義感や発行部数至上主義からマスコミが虚偽の情報を当初拡散し、その後ろくに謝罪もしないというのは、あらためてなんだろうかと思われることだった。
松本サリン事件における河野義行さんなど、他にもあとで無実の罪とわかった人を、当初マスコミや世論が犯人扱いして糾弾したことは多数存在するが、本件もその一つとして忘れてはならないことなのだろう。
マスコミの報道はあまり信じこまず、何かのバッシングが起こっている時は眉につばをつける必要があると考えさせられた。
本件は学校が舞台であったが、学校も含めて、どこにおいても、冤罪事件や狂言事件というのは起こり得ることなのだろう。
一方だけの発言を聞いて判断することなく、慎重に何事も見極めることの大切さをあらためて考えさせられた作品だった。