Nスペ『アウシュビッツ 死者たちの告白』を見て

先日録画していたNスペの『アウシュビッツ 死者たちの告白』を見た。
「ゾンダーコマンド」つまり、ユダヤ人でありながら、ナチスの手先としてガス室の運用や死体の処理に携わった人々が書きのこしたメモの数々についての特集だった。
アウシュビッツガス室の付近で、地面の下から、何回に渡り戦後になってからガラス瓶に入れたメモ用紙が見つかってきたそうで、劣化が激しく長い間解読不能だったのを、最近のデジタル解析技術の発達で読めるようになったところ、それらが複数のゾンダーゴマンドの人たちの残したメモだったことがわかったという。
同じユダヤ人たちから裏切り者や人殺しと罵られる苦悩などが綴られており、人間にこんな思いをさせるあまりに残酷な仕組みに、視聴しながらあらためてナチスに対する怒りを感じずにはおれなかった。
ゾンダーコマンドの人々は、家族が殺された復讐のため、あるいはなんとしても生きのびるため、恥を忍んでゾンダーコマンドとして生きながらえていた様子がメモには綴られていた。
ナチスは出身地や世代が異なるゾンダーコマンドを混ぜて使うことにより、ゾンダーコマンド間の不信や猜疑心を煽っていた様子もメモから浮かび上がっていた。
最終的には、それでもゾンダーコマンドの人々は団結し、反乱を起こしてガス室を破壊する計画を進めていたそうだが、どこからか計画が漏れたのか、事前に300人のゾンダーコマンドたちが移送されることになり、おそらくそのほとんどが口封じのために処刑されたそうである。
奇跡的に生き残ったゾンダーコマンドの人たちも、戦後に裏切り者と指弾されることを恐れて、口をつぐんで過ごしたそうである。
ナチスは関連の書類を破棄したため、ゾンダーコマンドの詳しいことは長い間わからなかったそうだが、彼らの内面の声を知る手掛かりとなる貴重なメモの数々の存在をこの番組で知ることができ、驚きだった。
ナチス協力者のユダヤ人は「カポ」と呼ばれ、同胞からも忌み嫌われていたことは、いくつかの関連の書籍などで今まで知っていたけれど、彼らの胸中も苦痛と苦悩に満ちたものだったことが番組でうかがわれた。
人間にこのような思いをさせることが、二度とあってはならないとあらためて思う。
ちなみに、ゾンダーコマンドを描いた作品としては、『サウルの息子』という映画があり、二年ほど前にDVDで見たが、あれほど重い映画は他にはあまり思いつかない。
いつか、この貴重なメモの数々の翻訳が書籍化されれば、ぜひ読みたいと思う。


https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/LGJ43WXVWY/