名将宮崎繁三郎―不敗、最前線指揮官の生涯 (光人社NF文庫)
- 作者: 豊田穣
- 出版社/メーカー: 光人社
- 発売日: 2012/01/01
- メディア: 文庫
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だいぶ昔から本棚に置いてあったのだけれど、なかなか読めずにいた。
今年の夏、やっと読み終えることができた。
宮崎繁三郎は、ノモンハン、インパール、ビルマ戦などで、見事な指揮で多くの戦果を挙げた名将だが、この本ではその人間性をよく描いてあり興味深かった。
特に胸を打つエピソードは、宮崎繁三郎の部隊はインパール戦で一番困難な最前線で戦い、作戦中止のあとは最後尾を引き受けたのだけれど、宮崎繁三郎は負傷兵を見捨てることを禁止し、死者は必ず埋葬することを命じたので、部隊は撤退しながらも、負傷者を見つけると必ず見捨てずに共に撤退し、死者たちは埋葬していったという。
撤退戦で、他の部隊の多くは軍規が弛緩し、堕落する中、宮崎繁三郎の部隊は厳正な軍規が保たれ、常に団結していたというのもすごい。
若い頃より、陸士・陸大の勉強だけでなく、個人的に武田信玄や上杉謙信の戦記を好んでよく学んでいたそうである。
その影響か、いったん夜襲をかけて次の日はわざと夜襲せずに緊張して眠らずにいた敵の集中力が切れる昼に攻撃をかけた、とか、誰もいないところに軍旗を掲げて敵の弾薬を消耗させた、とか、飯盒の煙をわざと多く炊いて敵に大軍がいるように見せかけた、とか、あたかも戦国時代の智将のようなエピソードも面白かった。
敗戦後も、将兵が虚脱状態にならぬよう、熱心に戦後の日本の祖国再建を説き、捕虜生活においていろんな弁論大会や余興を開き、また出身地別の兵士の集まり(兵会)をつくって戦後も協力し合うようにした、という話や、英軍の捕虜虐待には断固抗議してやめさせた、という話も感銘深かった。
世の中には、どんなに困難な状況でも、その中で自分の立場で最善を尽くす人がいる。
そういう人がいると、ずいぶん暗い状況でも救われる気がするものである。
あの日本陸軍の無謀な戦争や無駄な作戦の中で、宮崎繁三郎とその部隊の人々は、そういう人々だったのだと思った。