絵本 「9番目の戦車」

9番目の戦車

9番目の戦車


ある太平洋上の島で闘っている日本とアメリカの戦車部隊。

日本軍は撤退することになるが、アメリカの戦車部隊が追撃してくる。

主人公の戦車は、他の戦車たちや、戦車の乗組員と別れを告げ、キャタピラが大破したので、そのまま島にとどまり、敵と戦って食い止める。

すぐ隣には、同じくキャタピラが大破したアメリカ軍の戦車も。

そして、何十年も時が経ち、主人公の戦車も、隣の戦車も、いつの間にか友達になり、さび付きながらも海を一緒に眺めている。

と、そんなある日、その戦車の乗組員だった若者が、随分と年寄りになり、その戦車に再び会いにこの島にやってきた。

その若者が無事に生きてくれていたことを、どれだけその戦車も喜んだか。

実際には、もちろん戦車が感情を持ったり、心の中で言葉を語ることは、少なくとも私たち人間には感じることができないことだけれど、もし戦車に心があれば、まさにこの絵本のようなことを思っていたのかもしれない。

時折、今でも南の島には、日本軍や米軍の戦車や戦闘機の残骸が、さび付きながらも残っているという。
この絵本のような会話をそれらの機体はかわしているのかもしれない。

心に響く、良い絵本だった。