絵本 「彼の手は語りつぐ」

彼の手は語りつぐ

彼の手は語りつぐ


南北戦争の頃にあった実話を元にした絵本。


主人公の白人の十五才の少年・シェルダンは、北軍の兵士となって戦場へ行くが、そこでひざを鉄砲で撃たれ、身動きがとれなくなり、部隊に取り残されてしまう。


そこを、たまたま通りがかった、同じく北軍の兵士で、部隊からはぐれてしまっていた黒人の少年・ピンクス・エイリーが見つけて、シェルダンを抱えて何日も歩き、自分の家まで連れて行く。
ピンクスの家では、ピンクスの母が、シェルダンのケガの手当を優しくしてくれた。


シェルダンは、徐々に回復するが、もう戦場に行くのは嫌だと思う。
しかし、ピンクスは、それでも自分は戦場へ戻るという。
シェルダンがどうしてそこまでと尋ねると、


「おれの戦争だからだよ、セイ。お前の戦争でもある。そうだろ?おれたちが戦わなければ、だれが戦うっていうんだ」


とピンクスは答える。
この国の病気である奴隷制を終らせるためには、自分たちが戦わなければならないと。


やがて、シェルダンは完全に回復し、二人で戦場に戻ろうと考えている矢先に、南軍の兵士たちがやってきて、間一髪でシェルダンとピンクスは地下室にかくれるが、ピンクスのお母さんは南軍の兵士に撃ち殺されてしまう。


二人は、嘆き悲しみ、出発して北軍に合流しようとするが、途中で南軍に見つかって、捕虜になり、シェルダンはピンクスと引き離され、アンダーソンビル収容所に入れられる。
そこは、多くの北軍の兵士がろくに食べ物も与えられず、多くが餓死で死んでいった収容所だった。


シェルダンは、南北戦争が終わり、ガリガリに痩せていたが、なんとか生きて帰ることができた。
しかし、ピンクスは、後から聞いた話では、引き離されてすぐに絞首刑になっていた、とのことだった。


シェルダンは、もう誰も他に覚えていないピンクス・エイリーを、自分だけは覚えていなければと思い、ピンクスとの思い出と、握手した時のことを、自分の子どもや孫に語り継ぎ、その子どもや孫はさらにその子へと語り継ぎ、ひ孫の子がこの作者だという。


歴史や、その中での勇気や思いは、本当に語り継ぐことこそが大切なのだろう。


とても胸を打たれる絵本だった。
多くの人に読んで欲しい。