セミラミスについて

ギリシャに伝わる伝説に、アッシリアの女王セミラミスの伝説がある。

幼くして親に捨てられ、鳩に育てられて成長し、やがて美しく聡明な少女となり、オンムスという軍人と恋に落ちる。
オンムスは将軍となり、バクトリア(というからインド西北部の古代国家)と戦いに出征し、どうしても攻略できない要塞都市の前に攻めあぐんでいると、セミラミスが智謀と策略を提案し、そのおかげで見事にオンムスはその都市の攻略に成功し、英雄として凱旋する。

しかし、オンムスを妬み、かつセミラミスを見初めたアッシリアの王・ニヌス(もしくはニンヌス)により、セミラミスは王の側室にされてしまう。
その様子に、オンムスは絶望して自殺してしまう。

セミラミスはニヌスの寵愛を受け、王子も生まれる。
ある時、セミラミスは言葉巧みにニヌスに、五日間だけ自分に王冠をかぶせ、王にしてくれと頼み、説得に成功する。
ニヌスは部下たちに命令し、五日間はセミラミスを王として仕えるように命じる。
最初の一日目、セミラミスは大臣や将軍たちを宴会に招いて接待し、手なずける。
二日目、ニヌスを幽閉する。
三日から五日の間に、ニヌスを殺害し、国の全権を掌握した。

その後、セミラミスは空中庭園をつくったり、運河や道路をつくり、また各地に転戦し勝利し、アッシリアの領土の回復や領土拡大に成功する。

しかし、再びバクトリアとの戦いになり、バクトリア軍の象の部隊に苦しみ、布にわらをつめて象の模型をつくり、一時的には互角に戦うものの、結局敵に見破られて敗北を喫する。

国に帰るが、部下や民衆の怨嗟が自分に向いていることを自覚し、王位を息子に譲り、自分は鳩となって地上から去って行った。

という物語である。

全くの絵空事かというと、どうもそうではないらしい。
モデルは紀元前九世紀頃、実在したサンムラマットという女性で、シャムシ・アダド五世の死後、息子のアダド・ニラリ三世の摂政として権勢を振るったそうである。
評価は二つに分かれるらしく、当時はアッシリアの領域が著しく小さくなりアッシリアが弱体化した時代なので、アッシリアの混乱や王権の弱体化を招いた悪女という説もあれば、逆にアダド・ニラリ三世の頃からアッシリアの国運の回復が始まるので、亡国の危機に瀕したアッシリアの中興を成し遂げた聡明な女性という説もあるようである。

いずれにしろ、長く伝説として語りつがれるのだから、当時においても忘れがたい強い印象を人々に与えたのだろう。
男性ばかりのアッシリアの王名表や歴史の中で、特異な人物であることは確かである。

ちなみに、おそらくこの時代が、旧約聖書預言者・ヨナの時代である。
また、シャムシ・イルという宦官が絶大な権勢を振るっていたことも碑文からわかっている。

やたらキャラ立ちしたキャラが多い時代なので、ドラマ化したらきっと面白いと思うんだけどなぁ。