池上彰 「日本の決断」

わかりやすく今の日本のさまざまな状況や課題が解説されていて面白かった。

ツイッター等々を見ていると、安易に政治や政策に善悪を決めて怒りや悪口雑言を書いている人をよく見かけるが、せめてもこの本を読んでから論じて欲しい。
消費税についても、単純に反対を言うだけでは、なかなか問題が解決しないこともわかりやすく整然と解説してある。

アベノミクスについて、国債金利が上昇するリスクがあることも、よくよく国民は理解しておくべきなのだろう。
年金負担について、年齢別から能力別へということも、大事な論点だとあらためて思えた。

興味深かったのは、日本は地熱発電について世界第三位ぐらいの潜在的な資源があるそうで、それを開発すれば、原発二十基分を地熱で賄えるそうである。
温泉とは利用する地下水の層が違うので、温泉を気にする必要はなく、民主党政権時代にすでに開発のための法規制を緩める措置が行われているそうである。
ただし、地熱は開発に十年かかるそうで、かなりの政策的なリーダーシップが必要な事柄なのかもしれない。

あと、アメリカがシェールガスの開発に成功した結果、2030年代には中東から撤退するかもしれないという話も興味深かった。
米軍が中東に関与しない方向になれば、イスラエルはもちろん、中東の油田に依存している日本も大きな影響を受けるだろう。
それまでに、エネルギー政策や安全保障政策をどうするか、きちんと考えておくべきことなのかもしれない。

あと、個人的に興味深かったのは、そういえば以前何か他のところで読んだ記憶もあったのだけれど、日本国憲法GHQ草案は、衆議院一院制だったのを、日本の側の修正で二院制になったということ。
最近、参院を廃止した方が良いという意見もあるようだけれど、二院制は日本側の発議だということは考慮に入れておくべきことかもしれない。

また、汚染水の問題や原発事故処理に関し、東電の破綻処理ないし解体が論じられているが、たしかに本来ならばもっと考慮されるべき事柄なのだろう。
原発事故処理の現場の作業員の大変さや、彼らにこそもっと大きな名誉や報酬が与えられてしかるべきというのも、本当にそのとおりと思う。

いろいろ、忘れかけていることや、あんまりクリアリイに考えてなかったことを、あらためて考えさせてくれる、良い一冊だった。