ジャック・アタリ 「いま、目の前で起きていることの意味について――行動する33の知性」

いま、目の前で起きていることの意味について――行動する33の知性

いま、目の前で起きていることの意味について――行動する33の知性


ジャック・アタリや、その他のフランスの識者の対談やメッセージが収録されていて、なかなか面白かった。

現象の意味とは、会話を通じて明らかになるということ。
歴史の流れにどんな意味を与えるか。

そんな問題意識から、この本はつくられたらしい。

さまざまな多岐にわたる現代社会の課題について論じられているが、さまざまな事柄を通じて、この本は「オールタナティブ・グローバリズム」とでも呼ぶべきもの、つまり単なる市場経済ではない、民主主義や人間により価値を置いたもうひとつのグローバリズムを追求している。

そうした中で、目前の危機として、世界の寡頭支配(G8や多国籍企業など)を指摘し、民主主義の問題として「影響力のある少数者の離反」を指摘しているのは興味深かった。

また、穏やかな世界政府の構築こそが国際社会の問題の解決には本当は必要ということが論じられ、その萌芽としてWTO国際刑事裁判所京都議定書や航空機への課税が挙げられていることも興味深かった。
欧州安全保障協力機構(OSCE)の話も興味深かった。

ミシェル・ロカールの話の中の、フランスのRMI(社会参入のための最低保証収入)や、社会保障一般税の話は興味深かった。

スケープゴートなしにいかに済ませるか、という政治的・社会的暴力と民主主義についての議論も興味深かった。

その他、

政治家の仕事とは、連帯をつくりだし、文化や価値体系を保護すること、

教育とは、100年後に仕事する人たちの知に直接影響を与える仕事であること、

といった話も面白かった。

レヴィナスのことばの「人生とは受けつぎ、ほめたたえ、伝えること」という言葉が引用されており、それもとても感銘を受けた。

なんとか、単なる索漠とした市場経済至上主義とは異なる、もうひとつの、別の形のグローバリズム、「オールタナティブ・グローバリズム」をどうやってつくるか、グローバルな政体やグローバルな社会保障をどうやってつくるか、これは本当に二十一世紀の、そしてこれからニ、三百年間の間の人類の課題なのかもしれない。
まだ途方もない夢のような話だが、大事なことは、アタリらのようにそれらを論じあい、自覚や意識や合意や同意をつくりあげていくことなのかもしれない。

他にも、ジャック・アタリの本をいろいろ読んでみよう。