民主党の新綱領について

民主党 新綱領
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民主党の綱領、これはこれで良いから、あとはこの言葉をどうやって良い方向に現実に用いていくかだろう。
これで足りなければ、自民党みたいに新しい綱領をまた付け加えていってもいい。
とりあえずは、これで決まったならば、これでがんばっていって欲しいものだ。


ただ、一点だけ気になるのは、自民党の綱領も共産党の綱領も、それなりに歴史観があるのに対して、どうも民主党の綱領は歴史観が手薄な気がする。
日本の中間層の歴史とそれを踏まえた中間層に軸足を置く政党としての、歴史への展望と概括と使命感があった方が良かったと思う。
それは今後の課題かもしれない。


綱領の中の、


「私たちは、地域社会に根差した活動の中から課題を見出し行動する。積極的な議論と結論の遵守を旨として、健全な党内統治を徹底する。公開・参画・対話を重んじ、広く国民との協働による政策の決定と実行を目指す。」


ということは、いいこと言っていると思う。
要は、これからどう具体的に実践していくかだろう。


また、


「得られた収入や時間を、自己だけでなく他者を支える糧とする、そんな人々の厚みを増す。」


ということも、とても大切なことだと思う。
これは、湯浅誠さんの言葉を使うならば「溜め」ということだ。
民主党にはこのためにがんばって欲しいし、心ある人は応援すべきと思う。


民主党の新綱領についてのネット上の意見の多くを見ていて違和感を感じるのは、他人事として文句ばかり言っている人が多いということだ。
お客様民主主義の発想しかない。
政権交代可能な複数政党制の民主主義を維持するために、自分たちが一緒になってつくって支えていくという発想が欠如している。
しかし、お任せ民主主義こそだめなものだ。


だいたい、民主党の新綱領に文句ばかり言っている人々の多くは、共産党の綱領をしっかり読んだこともない連中ではなかろうか。
自民党の綱領すらあやしい。
また、綱領は、要はそれをベースに、どれだけ実際の現実をこれからつくっていくかが大事で、文言自体よりそっちが大切だということも、そもそもわかっているのかどうか疑問だ。


民主党の綱領は、共産党自民党に比べて歴史観がややあいまいで、内容もあっさりしているかもしれないが、どちらの党にもない民主党としての良さも描かれている。
あとは、国民が、単なるお任せ主義としてではなく、健全な二大政党制を自分のこととしてつくっていく、担っていく努力をするかどうかだ。


日本の最大の病は、特定の政党や政治家というより、政治を自分のこととして担おうとせず、政治家任せにして自分を消費者としてしか思わない無責任なお任せ民主主義のメンタリティだろう。
外から文句ばかり言っているのではなく、自分たちの代表として政治家を支え、育てていく気概こそが肝要である。


右であろうが左であろうが、文句しか言わない連中こそただの駄々っ子の無責任な恥知らずだ。
民主党を叩きのめしてこの事態を招き、なおかつ自らの責任を反省しない小沢派こそ、しょせんはお任せ民主主義のメンタリティしか持たない最たるものと思う。
誰かに任せるのではなく、自分がつくる発想がない。


小沢派も橋下支持者も、強力なリーダーの誰かに任せれば一挙に問題が解決するという、一任民主主義・お任せ民主主義のメンタリティという点で、一見政策上の違いはあれど、実は似たようなものだろう。
いいかげん、特定の人ではなく、政党組織や政策や支持基盤の重要性を理解すべきである。


民主党自民党の違いはないと言う人がときどきいる。
しかし、この十年、いくつかの点で大きな違いがあった。
まず、毎年機械的に年間二千二百億円分を社会保障費を削っていた自民党と比べて、民主党はそれをやめて地道に社会保障費を拡充した。
次に、民主党地方自治体への一括交付金化を実現した。しかし、安倍自民党はまた昔のひもつき補助金に戻した。
さらに、民主党脱原発を目指したが、自民党は再びその路線を覆した。
もう一つ言えば、イラク戦争に関し、自民党アメリカに従うばかりだったが、民主党イラク戦争を批判していた。


イラク戦争後、帰還米兵は、年間6500人もに自殺者を出しているという。
http://youtu.be/9QjIg0NYhl4
徴兵制の実施や九条改正や集団的自衛権と勇ましく言う人々が随分多いけれど、もしそれらが昔に実現していれば、日本もイラクやアフガンに多くの若者が行き、こういった状態になっていたかもしれない。


先年の、帰還米兵らによる反戦デモのメッセージも考えさせられるものだった。
http://youtu.be/R4Z1avRGWiU
自らの体験を踏まえた切実な声の数々に胸を打たれた。


イラク・アフガン戦争で、アメリカは一説には四兆ドルを費やしたという。
(1〜3兆ドルという説も)。
そんだけあれば、どれだけ世界を良く変えることができたろう。
砂漠の緑地化や、乳幼児の医療や、環境問題への対策にも、どれだけ効果をあげることができたろうか。
なんと愚かなことか。
そして、そんな戦争に唯々諾々と従うばかりだった自民党がろくな検証も責任も問われずにかくも再び権勢を振るっているとは。


民主党は綱領においても、専守防衛を明確に掲げている。
日米同盟を重視しつつ、なおかつ自民党のように際限もなく従うのではなく、是々非々の立場で臨む政党として、今後心ある国民全体で育てていくべきだ。


日本には、分厚い中間層の復活のために社会保障を重視し、軍拡でも非武装でもない現実的な専守防衛路線を堅持し、自民党だけに権力を偏重させない政権交代のもう一方の軸となる政党がどうしても必要である。
それがなければ、日本のデモクラシーは本当に滅びかねない。
政権交代可能な複数政党制のデモクラシーを支えるのは、他でもない、我々自身だということを、私たちは忘れてはならない。