野口悠紀雄 「超 経済脳で考える」

野口悠紀雄の「超」経済脳で考える

野口悠紀雄の「超」経済脳で考える

とても面白かった。
目からウロコ。
ぜひ多くの人に読んでもらいたい。

さまざまな経済学用語や、日本の現状、これからどのような方向を目指すべきかについて、とても明晰にわかりやすく書かれている。

特に面白かったのは、

格差是正には、税・社会保障政策と、個別の産業や地域に対する補助政策・価格政策・規制政策との二種類があるとし、その優劣を論じていた箇所。
著者が言うには、前者は市場経済活動に介入せず、撹乱しないのに対し、後者は市場を撹乱する、つまり市場による資源の最適配分が撹乱するという。
さらに、日本の場合、社会保障費が20兆円なのに対し、個別の規制・補助・価格政策によって、農業・流通などの低生産部門に対して70兆円ほどの所得補助額が目に見えない形で、価格水準が国際水準よりも25%も割高になるという仕組みによって行われているということが述べられており、なるほどーっと思った。

また、法人税率の話もとても興味深かった。
日本の場合、「外国税額控除」があるので、法人税が高くてもべつに海外に企業が移動することはない、海外に拠点を企業が移すのは法人税率が問題ではなく賃金の安さの問題である、と明確に説き明かしてあって、なるほどーっと思った。
法人税率を下げた場合、外国からの投資を活発にする要因にはなりうるが、日本の場合、外国資本が日本に入ることに極めて消極的な風土があり、企業間の株式の持ち合いなどがあるので、法人税率の引き下げを行う前に、外国資本への差別的扱いを除去し持ち合いを解除しないと、外国からの投資を増やす効果もなく、単に国内法人の負担を軽減するだけの結果に終わるという指摘も興味深かった。

国債問題についても、国債で調達する資金が将来に役立つように使われているかをチェックするのが一番大事だという意見もなるほどと思った。

日本は今後、債権大国・成熟した経済に必要な能力を身につけ、人口減少と高齢化という条件に適合した社会を目指し、低生産性部門の効率化や、比較優位の原則に則った産業構造の高度化や特化、垂直分業から水平分業への工夫などが大事だというのも、なるほどーっと思った。

株式市場はノーマルリターンしか得られないと言う話も、なるほどーっと思った。

銀行も、リスク評価能力や、内部統制などなど、課題をこなしていくことが大事なのだろう。

消費税についても、社会保障目的化すべきという意見がいかにまやかしかということを明確に説き明かしてあり、面白かった。

今日の錯綜する問題について、目からウロコのいろんな知見をとても明晰に説き明かしてくれる、本当に良い本と思う。