「首相の座より消費税」…野田前首相が語る
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20131006-OYT1T00214.htm
一ヶ月前に、野田さん自身のHPでも野田さんは以下のように語っていた。
http://www.nodayoshi.gr.jp/leaflet/detail/32.html
あらゆる非難を受けることを覚悟で、消費税増税を決めたのだろう。
今もって誤解が多いようだが、
1、民主党の2009年マニフェストには消費税を上げないとは一言も書かれていない。
2、民主党の2010年マニフェストは消費税協議が明記されている。
3、たしかに記者会見で政権交代前に鳩山さんが四年間は消費税を上げないと言ったが、すぐに協議をしないという意味ではないと鳩山さん自身が訂正している。さらに消費税増税は2014年からなので、その記者会見から五年後にあたり、なんら公約に違反していない。
ということが事実である。
しかし、民主党は消費税増税に関し、マニフェストに違反しているだの公約に違反しているだの、自民党や小沢派から言われ続け、そのようなイメージが定着してしまった。
野田さんに問題があったとすれば、徹底してそれらの誹謗中傷を粉砕し、事実は異なっていることをわかりやすく国民に発信する能力や努力が不足していたことだろう。
日本の選択肢は究極的には以下の三つしかない。
①消費税増税を回避し社会保障を削る(小泉・竹中路線)
②消費税増税をし社会保障を構築する(菅・与謝野路線)
③増税せず社会保障を削りもせず国債を乱発する(小沢・亀井路線)
このうち、①がいかに格差を招き一般国民の生活にしわ寄せを与えてセーフティネットをボロボロにしたか、また③が小渕政権等で行われ結果いかにこの天文学的財政赤字をもたらしたかは、この二十年の歴史を見れば明白である。
このうち、野田さんは、あえて②を選択した。
この①〜③とは別に、法人税を増税すれば良いという意見もあるが、現在、日本の企業の七割は欠損法人で法人税を支払っておらず、しかも法人税率が国際社会と比べて著しく高ければ、国際競争力を損なうだけである。
日本は国際競争力を維持しつつ、社会保障も維持強化するとすれば、②しかないというのが、与謝野さんや野田さんたちの判断だったのだろう。
本来であれば、自民党がこれほど財政赤字を悪化させず、あるいはもっと早くに社会保障維持のために消費税増税を実現していれば、菅政権や野田政権が十字架を背負う必要はなかったのだが、自分たちが悪化させたわけでもない財政赤字とボロボロになったセーフティネットの修繕のために、菅政権や野田政権はあえて十字架を担った。
今もって、この記事からのブログやつぶやきの大半は誹謗中傷の類が多いが、私は野田さんはその点、非常に気の毒な政治家であったし、巷間言われるよりはるかに評価されてしかるべき政治家と思う。
安倍政権発足後の景気回復も、一つには単なるムードやその時の国際投機の流れがあるが、一つには税と社会保障の一体改革が成立したことにより日本の財政への信頼が増したことが大きな原因であろう。
さらに、野田さんとしては、もっと選挙を遅らせることも選択肢としてはありえただろうが、維新の台頭を懸念し、維新の選挙準備が整わないうちに抜き打ち解散を行ったことは、維新の躍進を防ぐ上で大きな成果があったと思う。
今はだいぶボロが出てきたので維新がそれほど躍進する可能性があったなどと誰も思わなくなったが、衆院解散が二、三か月遅れていれば、維新が今よりはるかに多くの議席数を持っていたことは容易に予測される。
結果として、野田さんは日本の政治をポピュリズムの害毒から救ったと言える。
私は、税と社会保障の一体改革を成し遂げたという点と、維新の会の躍進を防いだという点で、野田さんは自分自身はあらゆる非難や誹謗中傷を一身に受けながら、そして自分自身の政党は大きく議席を減らしながら、それでもあえて、人気取りの政治ではない、本当に今の日本にとって重要なことを成し遂げるという意味で、ここ最近の政治家では珍しいぐらい、本当の意味での政治家だったと思う。
ただし、現在日本で進行している事態は、本来の与謝野さんや野田さんが成し遂げた税と社会保障の一体改革から大きく逸脱しつつある。
菅政権時の「税と社会保障の一体改革成案」では、格差や貧困の是正が明確に掲げられ、消費税は全額社会保障に用い、会計も明確化することが掲げられていた。
野田政権の税と社会保障の一体改革もその線に沿ってまとめあげられた。
しかし、安倍政権は、消費税増税の一方で、企業バラマキの経済対策を打ち出している。
財政規律も乱れ、土建ばら撒きによる赤字の増大は信じられないペースで進んでいる。
そもそも、自民党はマニフェストで消費税は社会保障にのみ使うと述べていた。
経済対策に多大な税金を投入することは、その点大いに疑問である。
さらに、世論調査によれば、軽減税率の導入を七割の国民が望んでいるが、自民党は軽減税率の導入は動こうとしていない。
民主党は軽減税率の導入や貧困格差対策を明確に打ち出し、企業ばら撒きの経済対策を批判して、本来の税と社会保障の一体改革からの安倍政権の逸脱を批判すべきである。
また、菅・野田政権時の税と社会保障の一体改革の本来のありかたと、そこから逸脱している安倍政権の政策の違いについて、国民もきちんと理解するだけの見識を持つべきだろう。
野田さんほど非自民で一貫している政治家を、第二自民党だという粗雑なレッテル貼りしかできない人々は、上記のような具体的な明晰な批判をなんらできない無能に自らを陥れるだけである。