デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
- 作者: 藻谷 浩介
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/06/10
- メディア: 新書
- 購入: 27人 クリック: 368回
- この商品を含むブログ (208件) を見る
さまざまな統計データを駆使してあって、とても面白かった。
藻谷さんが言うには、今の日本は、輸出でもほとんどの国に対して黒字だし、中国が発展すればするほど日本も儲かるし、国際競争力は非常に強く、東京と地方の地域間格差も実は存在しない。
しかし、なぜ日本において内需が冷え込んでいるのか。
一般的に言われるような、不景気のせいでもなく、デフレのせいでもなく、生産性が低いからでもなく、中国にやられているからでもなく、景気対策が不足しているからでもない。
ひとえに、生産年齢人口、つまり15〜64歳の世代の人口が減少し、高齢者の人口が増え続けているからだという。
そのため、消費が冷え込み、預貯金は巨額に膨れ上がっているのに、ちっとも使われず、経済全体が冷え込んでいる。
そのうえに、企業が人件費削減と若者に冷たい雇用の仕組みばかり工夫するので、ますます若者の懐が冷え込み、したがって消費が冷え込み、経済全体が縮小している。
とのことである。
豊富なデータで裏付けてあり、とても納得がいった。
財政出動や景気対策ばかり主張する小沢・亀井派の人々や、中国を叩けば問題が解決するように考えているネトウヨの人々は、本書をじっくり読んでみたらいいのではないかと思う。
ただし、藻谷さんの言っていることは間違ってはいないと思うが、国際経済の変化や産業構造の問題はあまり触れられていないので、野口悠紀雄さんの議論も合わせて読めば、かなり今の日本が置かれている状況の問題がクリアになるのではないかと思われる。
ちなみに、藻谷さんが、この現下の日本の状況において、それではどうすればいいかということについて提言しているのは、
「富裕高齢層から若年層への所得移転」
である。
つまり、年功序列制度を改め、若者の雇用や賃金を手厚くし、生前贈与を推進することを説いている。
たしかに、それらが大事なことかもしれない。
また、この若年層への所得移転にプラスして、女性の雇用促進や、海外からの観光客を増やすことが、現下の日本に最も有効な政策と述べている。
・富裕高齢層から若年層への所得移転
・女性の雇用促進
・海外からの観光客の促進
これらは、たしかにもっと工夫されるべきことだろう。
これと合わせて、
・産業構造の転換
・エネルギー政策の転換
がなされれば、日本もかなり良くなっていくのかもしれない。