- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2008/06/25
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『ポルフィの長い旅』は、本当に素晴らしい作品だった。
これほどの名作とは、正直、見る前には想像していなかった。
放映当時視聴率は低迷したようだし、ネット上の評価を見ると、どういうわけかあまり高くないようである。
しかし、私はこの『ポルフィの長い旅』は、間違いなく世界名作劇場の中ではもちろん、日本のアニメ史上でも最も高い評価がされてしかるべき作品と思う。
後世必ずや高く評価されると思う。
何よりもまず驚くなのは、精緻を極める背景や映像の美しさである。
毎回、映画にして良いほど自然や街の景色が美しい。
そして、映像だけでなく、物語もとても良かった。
作品の舞台は1953年のギリシャ。
はじめの十数回は、ゆっくりと、主人公のポルフィとその妹のミーナと、父と母の家族の、シミトラ村での平和な生活が描かれる。
その日常がどれほどかけがえがないものだったか。
ある日突然、大地震が起こり、父も母も死んでしまう。
ミーナは地震のショックから、心身症になってしまう。
ポルフィは、はぐれて行方不明になったミーナを探しに、イタリア、フランスへと旅を続ける。
途中で出会う人には、親切な人もいれば、悪い人もいる。
特に、この作品のすごいところは、とても子ども向けの作品とは到底思えない、人間の心の闇や深淵をしばしば描いているところだ。
誰もが何かしら、心の傷や欠けたところを抱えている。
しかし、人との出会いによって、それらが癒されたり、乗り越えられていくこともある。
第三十五話「信じるこころ」の中で、神父さんが、人の言葉を信じて妹を探し旅を続けるポルフィと、神の言葉を聞いたという聖書の言葉を信じる自分は同じだ、というシーンがある。
確かにその姿を見たという人の言葉を信じて旅するポルフィは、信仰の極意と似通っているのかもしれない。
理屈を抜きにして、ポルフィとミーナの兄妹愛は本当に胸を打たれ、泣ける。
また、その二人の旅を見守る、フクロウのアポロの姿も、本当にかわいらしく、胸を打たれるものがあった。
「世界は広いから、迷った時は、一つのことに捕らわれず、いろんな見かたをしてみなさい。」
という言葉も、最終回で思い出され、その意味がしみじみ物語を通じてわかる気がする。
信じる心と、前に進んでいくことが、本当に偉大なことだと、ポルフィには本当に教わった気がする。
ただ、この作品が視聴率が低かったというのは、その理由もわかるような気がする。
というのは、この作品は、全く視聴者に媚びようとしていないし、そもそも子ども向けにつくることを忘れているだろうと思われるし、子ども以外のオタクなどのことも全く配慮していない。
つまり、採算を度外視して、ひたすら芸術性を追求していると思われる。
したがって、世には必ずしもその時には一般的には受け入れられないのかもしれない。
しかし、必ず時が経てば、高く評価されるだろうし、子どもにとっても、また大人にとっても、本当に良いものこそ、最も心の糧になるし、心に残るものだと思う。
世界名作劇場のシリーズは、どれも名作が多いけれど、この『ポルフィの長い旅』は、その中でも特に私にとって忘れがたい作品となった。
この作品に出会えて、本当に良かったと思う。