天皇の政治利用は断じて排すべき 山本太郎さんの直訴事件に関して

山本太郎議員、天皇陛下に手紙=秋の園遊会で手渡す−「原発問題伝えたかった」
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013103100768


かつて、明治の時代には、田中正造明治天皇に直訴したことがあった。
簡単に陛下に手渡すことができた太郎さんと、直訴に際し離縁状と遺書を書いた田中正造と。
随分時代も変わったものだ。
しかも時代背景も憲法制度も全然違う。
山本太郎さん、本当に陛下を思うなら、これはあってはならない。


「臣、田間の匹夫、あえて規を踰え法を犯して鳳駕に近前する、その罪、実に万死に当れり。しかも甘んじてこれを為す所以のものは、洵(まこと)に国家・生民の為に図りて一片の耿耿、竟(つい)に忍ぶ能はざるものあればなり。」


田中正造の直訴状の中の一節である。


田中正造は、明治天皇への直訴を、「その罪、実に万死に当れり。」と自ら冒頭で述べ、死ぬ覚悟でやった。
実際、遺書も書き、離縁状も書いている。
直訴状を田中正造に頼まれて書いた幸徳秋水も命がけで書いた。
明治は、良くも悪くも、そういう時代だった。


山本太郎さんは、そうした覚悟で行ったのだろうか。
しかも、そもそも、もし命がけで訴えるならば、陛下にではなく、国民や政治家に訴えるべきだろう。


国会議員ならば、訴えるべき相手は国会の他の議員たちであり、また国民であるべきだ。
たしかにそれはものすごく手間暇がかかる。
山本太郎さんも今までそれをやり、疲れてしまい、もっと一足飛びにできる方法をと思ったのかもしれない。


しかし、世の中を変えるには今はデモクラシーの他に方法はない。
命をかけるならば、デモクラシーに命をかけるべきだ。


ネット上に、山本太郎さんを擁護する意見も多々あるようだ。
しかし、子どもたちの被爆や現場作業員の労働環境を両陛下に知らせるために手紙を渡したという山本太郎さんの目的の是非はどうなのだろう。
両陛下が御存知ないと思っていたのだろうか。
両陛下のことゆえよく存じておられるのではないか。


おそらくすでにそれらの事情をよく知っておられる陛下にその情報を綴った手紙を突然渡すことに、何か意味はあるのだろうか。
しかも、天皇の政治利用は厳禁であり、現憲法では天皇は政治を左右することがあってはならない。
情報伝達、あるいは政治を動かす。
それが山本太郎さんの目的ならとんでもないミスだ。
しかも、このような目的が土台誤った行為を擁護するのはこれまた疑問としか言えまい。


理屈を抜きにしていえば、陛下に直訴というのは、日本人の中にあるロマンチシズムに訴えるものはある。
田中正造やもっとさかのぼれば高山彦九郎児島高徳などのような歴史がある。
だからこそ、危険である。
情念やロマンではなく、知性や理性によって、断固として天皇の政治利用を排除しなければならない。