中沢啓治 「オキナワ」


はだしのゲン』の作者の中沢啓治の作品。
1968年、戦争が終わってから二十年以上経ったが、まだ本土に復帰していない頃の沖縄が舞台。


主人公はアメリカ人の友人もおり、親の心配も知らずに遊びほうけていた。


しかし、母親が酔っぱらった米兵に轢き殺される事件が起きる。


そのアメリカ人の友人の父親も、ベトナム戦争で戦死する。


母を酔っ払い運転でひき殺した米兵は、軍法会議で無罪ということになる。


近所の米軍基地では、B52の墜落事故が起きる。


空を行き交う米軍機による騒音もいつも起こる。


貧しい暮らしの中でも、家族で支え合い、主人公の父が育てた闘牛に、新たに「平和号」という名前をつけて、ついには大会で優勝する。


重いテーマを真っ向から描いた作品で、かなり昔のの作品なのだけれど、とても面白かった。


それにしても、この作品の舞台となった時代から、かれこれもうすぐ半世紀経つわけだけれど、主人公たちが願った米兵による事故や米軍機の墜落に脅かされない平和な沖縄という願いは未だに実現していない。
そのことを思うと、なんとも深く考え込まざるを得ない。


この作品は、1970年頃、「少年ジャンプ」に連載されていたそうである。
ジャンプにこのように重いテーマの作品が掲載されるとは、今からではちょっと考えられない話だが、ぜひまたこのように世の中を啓発するような作品をジャンプやその他の雑誌も掲載していって欲しいものだ。


また、この本には、表題作の「オキナワ」のほかに、「冥土からの招待」と「うじ虫の歌」という、戦争中に壕の中で日本兵に殺された側の沖縄の人の悲しみを描いた二作も収録されている。
あらためて、沖縄の歴史の中の重い悲しみを考えさせられた。


はだしのゲン』とともに、今後も読み継がれて欲しい漫画作品だと思う。