絵本 「パリのモスク ユダヤ人を助けたイスラム教」

パリのモスク―ユダヤ人を助けたイスラム教徒

パリのモスク―ユダヤ人を助けたイスラム教徒


第二次世界大戦中、ナチスドイツに占領されたパリでは、多くのユダヤ人が捕まり、殺されていった。


しかし、当時、パリにはイスラム教の大きなモスクがあった。
第一次大戦でフランスの植民地から五十万人ものイスラム教徒が出征して戦った御礼にフランス政府から敷地が安く払い下げられて建てられたそうである。


そのモスクの責任者のシ・カドゥール・ベンガブリや、医師のアーマド・ソミアらは、イスラム教徒だったが、極秘裏にユダヤ人たちの救出に尽力。


イスラム教徒だという偽の証明書を大量に発行し、またモスクに逃れてきた多くのユダヤ人を匿い、多くのユダヤ人たちが安全な場所に逃げるのを手伝った。


その全貌は今でもまだ十分に解明されていないが、少なくとも1732人以上、あるいはさらに多くの人々が助けられたらしい。


今日、イスラエルパレスチナの問題があるために、ユダヤ教イスラム教というと宿敵というイメージがあるが、第二次大戦中、このようにイスラム教徒が命がけでユダヤ教徒であるユダヤ人たちを助けたことは、貴重な歴史の一ページであり、今のような現実があるからこそ、忘れてはならない、よく思い出すべき歴史だと思う。


カドゥールらは、ユダヤ人たちも大切な兄弟姉妹である、と述べ、実際にそう思って命だけで助けたそうである。


ユダヤ教聖典のタルムードにも、イスラム教のコーランにも、どちらにも、一人の人の命を救うことは世界を救うのと等しいという意味の言葉があるそうである。


正確には、コーランの五章と、タルムードの四章にあるそうだ。


どのような宗教の真髄も、このようなものだと思うし、宗教や民族の枠を超えてこのような実践を行う人々こそ、その宗教の本当の真髄を実践する人なのだと思う。


多くの人に読んで欲しい、素晴らしい絵本だった。