- 作者: 後藤竜二,高田三郎
- 出版社/メーカー: 新日本出版社
- 発売日: 2005/09
- メディア: 単行本
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心に残る絵本だった。
本当にあったことを元に描かれているそうである。
敗戦の年、これでやっと平和にりんごの収穫ができると、北海道の美唄というところにあるりんご農園の持ち主の主人公は思っていた。
その年は、ちゃんとりんごも多く実がなっていた。
ところが、ある時、大勢の中国人と思われる人々がやって来て、りんご農園からりんごをとろうとしていた。
主人公の男性は、彼らが、近くの炭鉱に戦時中に連れてこられて働かされていた人々だったことを知っていた。
彼らは食べる物がないようで、やせ細って、必死にりんごを集めて食べようとしていた。
しかし、そのりんごがなくなれば、自分や家族が収入を得る道がなくなり、自分たちが飢え死にしてしまう。
そう思って、主人公の男性は、片言の中国語は兵隊として中国に行っていた時に覚えいていたので、彼らのリーダーと思わしき人に必死に片言の中国語で、自分の事情を話した。
すると、彼はきちんと耳を傾け、よくわかった、と答え、仲間たちにとったりんごをすべて置いていくように命じ、実際にみんなそうしてくれて、そのまま帰っていったそうである。
本当は、少しならば持っていっていい、と言おうとしたが、緊張しすぎていて声にならなかった。
それ以来、その季節が来るたびに、彼らはどうなったのだろう、無事に国に帰れたのだろうか、とその男性は、彼らのことが気になる。
という物語だった。
これほどひどい目にあい、極限状態にありながら、相手の主人公の男性の言葉にきちんと耳を傾けた、中国人たちのリーダーの人は、本当に偉いと思った。
強制連行は、一説によれば、中国人と朝鮮人を合わせて二百万人を超える人びとが炭鉱などに連れてこられて戦時中に働かされたそうである。
しかし、実態はどうもよくわからず、記憶も風化しつつあるらしい。
この絵本を読んで、あらためて、その歴史をきちんと直視しなければならないと思った。