絵本 「みなまた 海のこえ」

石牟礼道子さんが文章を書いている絵本。

かつて、あらゆるいのちが仲良くつながって幸せだった水俣の海や山や村。
生まれてくる子どもは、みんな喜ばれ、みんなでそのいのちが生まれてきたことをよろこんで、これから幸せな人生を送るだろうとみんなで思っていた。

しかし、最初にチッソの工場が来た時に、山からキツネたちが巣を爆破されて追い出されて天草に逃れていき、

徐々に、海や湧水に毒がたまり、魚や生きものたちも、そして生まれてきた子どもまでが、毒にやられて苦しみながら死んでいく。

彼らの無念の声と、かつてこの地がどれほど豊かで幸せな地であったかを、絵も文章も入魂の筆で描いていた。

多くの人に一度手にとって読んで欲しい。

また、水俣病の淵源は、決して昭和の三十年代ではなく、もっと昔から、戦前の、工場が進出した時からに始まる、ということをキツネの物語を通じて描いているところに、考えさせられた。
自然が狂いだすのは、本当にひどい状況が目に見えるようになってからだけでなく、ささいなところから始まっているのだと思う。
その時に、その変化や声に耳を傾けることができていたら。

声なき悲しみや無念の声を代弁する石牟礼さんの言葉は、本当に貴重なものだと思う。