絵本 「シークレット・カメラ」

シークレット・カメラ―ユダヤ人隔離居住区ルージ・ゲットーの記録

シークレット・カメラ―ユダヤ人隔離居住区ルージ・ゲットーの記録


第二次世界大戦中、ルージというユダヤ人が押し込められていたゲットーの様子を、必死に隠れて写真で撮り続けたメンデル・グロスマンという人がいた。


メンデルは、自分自身もユダヤ人だったが、書類用の写真の作成を命じられていたので、写真の機材や暗室が与えられていた。


もし見つかれば殺されるかもしれなかったが、後世に記録を残さねばならないと思い、ゲットーの中のユダヤ人たちを写真に撮り、そのうちのいくばくかが、奇跡的に戦後まで保存されて残った。


メンデル自身は強制収容所に送られる途中、終戦の少し前に亡くなってしまったが、彼が撮った写真は、今では非常に貴重な記録となっているそうである。


この本は、メンデルの写真に、文章を載せているもの。


とても胸打たれる、すごい一冊だった。


ゲットーの中のつらい理不尽な暮らしの様子。


その中で、ほんのわずかなパンを分け合う優しい人々の様子。


束の間、お互いに笑いあう人々の姿。


歌とバイオリンの周りに集まり、束の間の楽しみを得ている人々の様子。


これほどの過酷な絶望的な状況の中で、なおも助け合って、笑って生きようとした人々の姿には深い感動を覚えるし、その姿を克明に記録に残したメンデルの大きな人々への愛情にも、本当に胸を打たれる。


大きな権力の前に、時に人はあまりにも無力で、不条理に押し流されるしかない時もあるかもしれない。
しかし、その中でも、想像力や、愛する力は、それに対抗していける。
そう書かれているあとがきのメッセージも、胸を打つものだった。