絵本 「エンザロ村のかまど」

エンザロ村のかまど (たくさんのふしぎ傑作集)

エンザロ村のかまど (たくさんのふしぎ傑作集)


すばらしい絵本だった。

ケニヤのエンザロ村という村には、とても便利なかまどがある。

そのかまどは、実は今から二十年ぐらい前に、岸田袈裟さんという日本人の女性が発明したものだった。

それまでは、エンザロ村では、地面に石を並べてその上に鍋を載せて料理をしていた。
石の間から熱が逃げるために多くの薪を必要としたし、子どもが火傷することも多く、一度に一つの鍋しかかけられないので食事に多くの時間が必要だった。

しかし、エンザロ・ジコは三つの煮炊きができる。
日干し煉瓦と泥でつくるのでエンザロ村でも簡単にできる。
薪は少なくて済む。
わかした水を飲めるようになったので、乳幼児死亡率が激減したそうである。

岸田袈裟さんは、簡単にエンザロ村で誰でもつくれる水をろ過して飲む装置も発明したそうだ。

岸田さんはもともと、岩手の遠野村の出身だそうで、小さい頃うまやで見たかまどを思い出して、それを工夫してエンザロ・ジコを発明したそうである。

今は、エンザロ村だけでなく、このかまど「エンザロ・ジコ」はケニアの他の州にも、また隣の国のウガンダにも広がっているそうである。

岸田さんは、小さい頃に遠野村で習い覚えたぞうりづくりもエンザロ村で始めた。
それまでは裸足でほとんどの人は過ごしていたため、ケガや病気が多く、特に助産婦さんなどがHIVウイルスに感染するリスクが心配だったそうだ。
しかし、エンザロ村で「パティパティ」と呼ばれるようになった、バナナやトウモロコシの皮やパピルスの茎を使うぞうりのおかげで、けがや病気も減り、学校を休む子どもの数もぐんと少なくなったそうである。

こういうのが、本当の国際交流や国際援助というものなのだろう。
とても感銘を受けた。
一番大切なことは、どでかいダムや道路を高い金でむやみにつくることよりも、こうした本当に生活に役に立つ知恵を一緒に出しあうことなのだろう。

そういえば、アフガンでペシャワール会中村哲さんは、蛇籠工法という柳川に江戸時代から伝わる技術を使って、現地の人でもいつでも修繕できるような方法で用水路を建設したという。

岸田さんや中村哲さんに感銘を受けるとともに、そのような知恵をかつて編み出した江戸時代等の昔の日本人は本当に賢かったとあらためて思う。
こういう人々こそが日本の本当の宝なのだろう。