絵本 「むこうがわのあのこ」

むこうがわのあのこ

むこうがわのあのこ

  • 作者: ジャクリーンウッドソン,E.B.ルイス,Jacqueline Woodson,E.B. Lewis,さくまゆみこ
  • 出版社/メーカー: 光村教育図書
  • 発売日: 2010/12/01
  • メディア: 大型本
  • クリック: 1回
  • この商品を含むブログを見る


ある、アメリカの村に、黒人の居住地区と白人の居住地区を隔てる柵がある。


ある夏の日、白人の小さな女の子が、黒人の女の子たちが遊んでいるのを柵の向こうから見て、自分も仲間に入れてと言うが、すぐに断られる。


主人公の黒人の女の子は、その様子を見ていて、ひそかに心を痛める。


街でたまたまその子とお互いに親と一緒に出掛けている時にすれちがうこともある。


ある時、柵の上にその白人の女の子がよじのぼって座っているのを見て、主人公の黒人の子も柵の上によじ登って座り、仲が良くなる。


しばらく経ってから、他の黒人の女の子たちとも仲が良くなる。


という話。


実際にアメリカの田舎にはかつて、あるいは今でも、そのような柵があるのか、あるいは単に心理的な柵を象徴的にあらわしているのか、それはよくわからないが、考えさせられる絵本だった。


そういえば、フレデリック・ダグラスの自伝を読んでいたら、文字を学ぶことを黒人は禁じられている中、なんとか文字を学びたいと思い、教えてくれたのは、遊び友達である近所の貧しい白人の子どもたちだったという。
イクイアーノの自伝にも、同じ水夫仲間の親切な白人の少年と友達になり、英語を詳しく教えてもらうということが書かれていた。
子どもの世界は、大人の世界の偏見にまだ染まらずに、垣根のない世界が稀には成立することがあるのかもしれない。
おそらく、いろんな垣根や柵は、人間にとって、先天的なものではなく、後天的なものなのだろう。


この絵本の子どもたちのように、ごく自然な形で、柵によじのぼり、お互いに越境して、仲良く打ち解けることができたら。
世界はずっと平和になるのだろう。
絵空事のようだと言えばそうかもしれないが、必ずしも不可能なことではなく、意外と子どもでもできることなのかもしれない。
本来は、大人こそが率先してしなければならないことなのかもしれない。