尖閣警備をめぐる安倍首相と岡田さんの議論について

尖閣警備巡り首相と民主・岡田氏が応酬
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0703O_X00C13A3PP8000/


一昨日、国会で尖閣警備をめぐって、安倍さんと岡田さんが議論していたが、それについてはマスコミの報道の仕方に極めて疑問がある。


各人、きちんとこの質疑応答を自分の目で動画で見て欲しい。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=42474&media_type= 


正直、安倍さんの態度にはかなり首をかしげざるを得ない。


安倍さんは尖閣での対応について、民主党が「過度の軋轢を恐れていた」と述べている。
岡田さんがそのように言う根拠を問うと、安倍さんは「確信しているから申上げている。」と自分の感情だけを振り回した。
岡田さんが事実根拠を問うと、安倍さんは「個々のことは申上げません。」と述べるばかり。


これでは、岡田さんが言う通り、フェアではない、極めてアンフェアな態度ではないか。


さらに、日米同盟について、この三年間の民主党政権で著しく日米関係が損なわれたのを立て直したと安倍さんはよく述べているが、それは事実に反するのではないかと岡田さんは問いただしていた。
岡田さんは、ヒラリーやキャンベルの言葉を挙げて、民主党政権下も日米同盟は堅持されていたと述べた。
それに対し、安倍さんは鳩山政権の時の普天間返還の失態とトラストミーの事例を挙げていた。


しかし、これはやはり、極めてアンフェアな態度ではないかと思う。
たしかに鳩山政権の時はともかく、菅・野田政権では日米同盟が堅持されていた。
菅政権の時には、311の後にアメリカがトモダチ作戦を展開し、日米の協力は日本および世界に深い感銘を与えた。
野田政権の時は、日米協力イニシアティブが出され、そもそも今回晩餐会もなかった安倍さんと比べて、野田さんにはヒラリーさん主催の晩餐会も用意され、日米の強固な絆を内外に示していた。
これらの具体的な事例を無視し、あたかも民主党政権の三年間の間ずっと日米関係がぎくしゃくしていたかのように言い、自分があたかもそれを立て直したかのように述べる安倍さんの態度には大いに疑問を持たざるを得ない。


そもそも安倍さんは、国会議員の初心は「間違っても、政局に明け暮れたり、足の引っ張り合いをするためではなかったはず」と施政方針演説で述べていた。
尖閣や日米同盟についての発言を見ていると、御自身こそが、初心もつい先日の自らの言葉も忘れ果てて、全く異なる言動をしているのではないか。
このような言動は自らの信頼を損なうと自覚すべきではないか。
そう思わざるを得ない。


米英は他の政党と対立しつつも共存するというのが文化になっている。
しかし、安倍さんの態度を見ていると、そもそも自民党以外は政権を担うことが許されておらず、民主党政権の三年間はイレギュラーなものだったと本気で思っているようである。


かつての五十五年体制下では、たしかに政権交代が存在しなかった。
しかし、そのような時代はとっくに終わったのだし、あらゆる権力は腐敗することを考えれば、定期的な政権交代は必然であり、政権交代なき議会制民主主義など望ましくもないし無理な話である。
安倍さんには、まずは率先垂範して自らこそが醜い党派心を克服し、相異なる党派と対立しつつも共存するという政党政治の精神をしっかりと涵養することに努めていただきたい。


安倍さんは、そもそも第一次政権の頃に御自身で書いてベストセラーになった『美しい国へ』の中で、祖父の岸信介社会党の三輪寿壮との友情の例を引いて、与野党間の信頼と場合によっては信頼関係に基づいた政権交代こそが大事だと述べていたはずである。
御自身こそが、日本を醜くすることを厳に慎み、与野党が円滑に定期的に政権交代できるような建設的な政治を目指して欲しいものである。