絵本 「じゆうをめざして」

じゆうをめざして

じゆうをめざして


十九世紀前半のアメリカでは、「地下鉄道」という組織があり、南部の黒人奴隷の人々を、北部の安全な州やカナダまで逃げることを手伝う組織があった。


この絵本は、ある黒人の家族が、ある夜に自由を求めて逃げ出し、走ったり、地面を這ったり、ある時は「地下鉄道」の人々の家にとめてもらったり、馬車で運んでもらったりして、最後には無事に長い道のりを越えて自由な場所までたどり着く、という物語。


「地下鉄道」と言っても、実際に地下鉄があるわけではなく、長い道のりを行くためには、もっぱら逃亡する黒人の人々自身の足と、時折一部の区間だけ馬車や鉄道に運が良ければ乗れるぐらいだった。


もし仮に逃亡の途中に捕まれば、殺されるか、あるいはもっと過酷な奴隷労働に従事するかだったので、文字通り命がけの逃避行だった。


逃亡した黒人奴隷をかくまったり逃げるのを手伝うと処罰される法律もあったし、奴隷制擁護者からリンチにあう可能性もあったので、「地下鉄道」の人々も命がけでそうした活動を行っていた。


1865年の奴隷制廃止までの間に、三万人以上の人々が、南部の奴隷州から北部の自由州やカナダに向かって、この「地下鉄道」によって逃亡したという。


あとがきに、この著者の方が言っているように、今も形を変えて、「地下鉄道」と同じような勇気や優しさを持ってがんばっている人々が、私たちの身の周りにも、いろんなところにもいるのかもしれない。


緊迫感があって、当時の逃避行の様子の一端が伝わってくるような、良い絵本だった。