パルマレスの預言書

先日、アメリカの奴隷制の歴史を調べていたら、とても興味深い記述があった。


恥ずかしながら私は全然知らなかったのだけれど、十七世紀頃にパルマレスという都市が、ブラジルの密林の奥に、逃亡した黒人たちによってつくられていたという話である。


パルマレスは、最終的には白人たちに滅ぼされたそうだが、ほぼ半世紀に渡って独立自治を保ち、独自の共和制を維持していたそうである。


Wikipedia Palmares (quilombo)
http://en.wikipedia.org/wiki/Palmares_(quilombo)


パルマレスの存在と、それに尾ひれのついた伝説は、広く北アメリカの合衆国にも広がり、南部の奴隷などの間に口伝で伝えられたそうだ。
黒人たちだけの自由な都市というのは、奴隷の身分で苦しむ人々にとっては、ユートピアであり、心の支えや希望にもなる存在だったのだろう。


本で知って興味深かったのは、パルマレスの存在だけではない、


そのパルマレスには、何人か「預言者」と呼ばれる人がおり、膨大な預言書が書かれたという話だ。


パルマレスで信仰された宗教は、ブードゥー教キリスト教が混交した独自の信仰だったようである。
また、その近辺の土着のインディオシャーマニズムも混淆していたようだ。


何人か、アフリカから連れて来られて一時的に奴隷になっていた、もともとシャーマニズムの才能があった人か、あるいは新大陸で生まれ育って、パルマレスでそうしたシャーマニズム的な才能が開花した人が、非常に不思議な預言書を残しているそうである。


もっとも、残念ながら、そのほとんどは今日は失われているそうだが、いくつはパルマレスを滅ぼした白人たちによって書き残されている。


そのうちのいくつかが、先日読んだ本に記されていたが、以下の文章を読んで戦慄した。


「ドゥム、ドゥム、ドゥンドゥビ、白い人の国が北と南に分かれる。
四年の間、戦があり、北が勝って、黒い私たちも自由になる。


ドゥム、ドゥム、ドゥンドゥビ、それから六十年の後、世界は二つに分かれる。
一千万人が死んで、ほとんどの皇帝はいなくなる。


ドゥム、ドゥム、ドゥンドゥビ、それから二十年後、また世界が二つに分かれる。
今度は五千万人が死んで、その戦で悪魔が生れる。


ドゥム、ドゥム、ドゥンドゥビ、それから五十年間、戦わずに世界は二つに分かれる。
悪魔をお互いに握っていて、戦えないからである。」


その本にも、これは南北戦争第一次世界大戦第二次世界大戦・冷戦の四つに符号しており、今日でも謎とされていると言われているが、私も読んでいてそうとしか思えなかった。


もちろん、パルマレスの当時においては、そんなことは思いもせず、もっと身近なことについて、何か妄想めいて述べたことを、後世の人間が牽強付会してそう思うだけかもしれない。


しかし、これに続く次の文章も、なんとも不思議である。


「ドゥム、ドゥム、ドゥンドゥビ、世界が一つになり始めてから二十年、
黒い肌の皇帝が生れる。それが終わりの始まり。


ドゥム、ドゥム、ドゥンドゥビ、太陽は近づき、空は汚れ、油は尽きる。トウモロコシがとれなくなり、人々は飢える。


ドゥム、ドゥム、ドゥンドゥビ、人の寿命は短くなり、多くの人は疲れ、国々は衰えていく。


ドゥム、ドゥム、ドゥンドゥビ、最後に勝つのは、黒い人、黄色い人、白い人の中の良い人。肌よりも心の優しさが勝つ。」


この本が出版されたのは1980年代なので、この後半部分については特に言及がないが、この「黒い肌の皇帝」云々は、オバマさんのことではないかと私には思えてならない。
他の箇所も、温暖化や大気汚染や食糧難の予言だろうか。
なんとも不気味で、恐ろしい。


この「ドゥム・ドゥムの預言書」は、すべての行の始まりに「ドゥム、ドゥム、ドゥンドゥビ」という言葉が付くためにそう呼ばれているそうだ。
これが何を指すのかは不明だそうだ。
何か太鼓を叩きながら当初は述べられたのか、それとも神を讃える言葉なのか、あるいは預言者自身が自ら名前を名乗っているのか。
どれをも指す言葉なのかもしれない。


一説によれば、パルマレスの人々の一部は、白人の攻撃の前にさらにジャングルの奥地へと逃げ去り、今も独自の生活と文明を続けているという伝説があり、ブラジルではしばしば目撃情報が寄せられるそうである。


二十一世紀にもそんな不思議な話があるのかと思うと、なんとも興味深い気がする。
残念ながら、この本には、この「ドゥム・ドゥムの預言書」の断簡の上記部分しか載っていなかったが、もし他にもあるならば、ぜひいつか読んでみたいものである。






(読んでくださった皆様。以上のものは、エイプリル・フールの嘘なので、すみません!パルマレスという都市伝説があったことだけは本当で、「預言」云々は創作です(笑))