ロニー・ショッター 「秘密の道をぬけて」

秘密の道をぬけて

秘密の道をぬけて


1850年頃のアメリカが舞台の、児童文学の作品で、いわゆる「地下鉄道」を描いている。


「地下鉄道」とは、南部の奴隷州から逃亡する黒人奴隷を、安全に北部の自由州やカナダまで案内し、逃走を手助けする地下組織である。


この作品は、アマンダという十歳の女の子が主人公で、そのお父さんが地下鉄道の一員で、ある日、黒人の家族を家にかくまう。


その黒人の家族には、同い年のハンナという女の子がいて、二人はすぐに友達になる。


ほとんど一日の間しか、結局その黒人の家族はその家にいることができなかったのだけれど、二人は深い友情の絆を結ぶ。


当時は、逃亡奴隷法という法律があり、逃亡する黒人奴隷をかくまったりその逃走を手伝うと、禁固六カ月あるいは千ドルの罰金などが課された。
一方、黒人奴隷を捕まえれば、報奨金が出された。


そのような中で、損得を顧みず、危険をおかしてまで逃亡する黒人を助けた人々は、本当に立派だったと思う。


この作品では、アマンダの家族には以前、アマンダの下に亡くなった弟と妹がいて、そのお墓も大きな敷地の中にあることが語られる。
あまりそのことについて多くは作中では語られないけれど、おそらくは、アマンダの両親やアマンダ自身にとって、ハンナたちを助けることは、人生の悲しみや苦しみを自分たち自身が乗り越え、人生に意味を見出すための出来事だったのかもしれない。
誰かの自由のために尽くすことで、人は自らの自由の意味についても知ることができるのかもしれない。


アマンダは、ハンナがかつて逃げる前は字を学ぶことも禁じられ、本を手にとっただけで鞭打たれたことを聞いてショックを受ける。
そして、限られた時間に、ほんの数文字だけ、アルファベットを教える。
それまで考えたこともなかった、自分の自由や文字を知っていることのありがたさを、アマンダはハンナによって教えられた。
誰かを助けることは、実は自分が大きなものを受け取ることなのかもしれない。


とてもわかりやすく当時の雰囲気や出来事を描いてあり、良い作品だった。