絵本 「つぼつくりのデイヴ」

つぼつくりのデイヴ

つぼつくりのデイヴ


今から二百年ほど前。
「デイヴ」という黒人奴隷が、つぼをたくさんつくっていた。


当時は誰も特に気にもとめず、日常用のつぼとして使われていただけだった。
が、今日ではその芸術性が高く評価されている。


そして、それらのつぼの中に、しばしばデイヴが、自分の名前や日付、さらには簡単な詩の言葉を書き込んでいたがことが、それらのつぼを極めて貴重なものにしている。
というのも、黒人奴隷たちは、そのほとんどが文字を知らず、文字を学ぶことも禁じられていたため、当時の直接的な彼らの残した詩や言葉はほとんど残っていないからである。


デイヴがどうして文字を覚えることができたのか、また大半の黒人奴隷が単純農作業に従事するなか、どうして熟練を必要とするつぼづくりの技術を習得できたのかはわからない。
写真も記録もほとんどないので、どのような人生だったかもほとんどわからないが、つぼに書き込んだ詩とすばらしいつぼはたしかに今も残っている。


「私の家族はどこなのか?
すべての人 ―そして国に、友情を。
  1857年8月16日」


というあるつぼに遺された言葉は、とても胸を打つ。


時にユーモラスな詩も多々ある中、現存するつぼの中で最後のつぼには、


「十字架を背負ってこのつぼをつくったのは私
 悔い改めない者は滅びるだろう」


という言葉が記されているというのも、とても印象的だった。


推定では、デイヴは七十年以上にわたって四千のつぼをつくったそうだ。
また、三十五才くらいの時にデイヴは片足を失い、その後は腕が不自由な友人のヘンリーがかわりにろくろを回していたそうである。


苦難の時代の、困難な人生を、限られた条件の中から、自分を表現し、「生きた」デイヴは、本当にすごい人物だったのだと思う。


WEB上にも、いくつかデイヴのつぼについての写真が載っているサイトがあった。
絵本と併せて、見てみると深い感慨がある。


http://leonardtodd.com/daves-pots_282.html
http://www.usca.edu/aasc/davepotter.htm
http://www.digitaltraditions.net/html/D_Resources.cfm
http://www.digitaltraditions.net/T_Resources/Dave_Pottery/Daves_Verses.pdf


今の時代、自由につぼづくりや詩を書いたり、なんらかのアートに触れたり自分で表現できることは、実は非常にありがたい自由なのだということを、あらためて考えさせられる一冊だった。