絵本 「サラガのバオバブ」

サラガのバオバブ

サラガのバオバブ


西アフリカのガーナにあるサラガという町に、たくさんの鉄の杭が打たれた大きなバオバブの樹があるそうである。
そこは、昔、奴隷市場があって、その杭に縄で奴隷がくくりつけられ、売られた。
この絵本は、そのサラガのバオバブについての物語。


主人公のダウダは、村の鍛冶屋の息子。
元気に幸せに家族や友人たちと過ごしている。
十二才の誕生日に、お父さんが八つのとんがりがある鉄のペンダントをつくってくれた。
友達みんながうらやましがり、ダウダは幸せな気持ちだった。


が、突然、奴隷狩りの武装集団が村を襲い、ダウダやその両親や村のみんなは捕まってしまい、奴隷商人に連れて行かれる。
ダウダはお父さんお母さんとは別にさせられ、奴隷市場のあるサラガに連れて行かれる。
それから長い道のりを炎天下のもと歩かされ、ダウダを励まし、倒れると立ち上がらせてくれた後ろに並んでいたおじさんは、「やっと自由になれる」と言いながら力尽きて死んでいく。
それから、「奴隷の城」という白い大きな建物の中にある牢獄に入れられ、さらに奴隷船に乗せられ、遠いアメリカに運ばれ、南部の綿畑でダウダは一生働かされた…。


それから、二百年経った現代。
自分たちのルーツを探しに来たのだろうか。
アメリカからの旅行客の一団がサラガに来ている。
その中に、ダウダそっくりの若者が、ダウダのペンダントをして、サラガのバオバブの樹の下で、樹を見上げている。


不覚にも、そのラストのシーンでは、涙を禁じ得なかった。
本当に胸を打つ、素晴らしい絵本だったと思う。


インターネットで検索してみたら、以下のページに、そのサラガのバオバブの樹の写真が載っていた。
今は、鉄の杭ははずされているようである。


http://www.ghanaexpeditions.com/main/emancipation3.asp


本当に悲しい、許しがたい歴史であるのと同時に、このようなひどい目にあいながら、必死に耐えて生き抜いた人々は、本当に偉大だったと思う。