絵本 「木を植えた男」

木を植えた男

木を植えた男


これは本当に名作。


これほど感動する作品は、絵本のみならず、他のジャンルの文学などを含めて考えても、めったにない。


1913年、旅をしていた若者は、たまたまフランスのヴァントゥー山脈の奥の、荒涼とした地で、ひとりの羊飼いに出遇う。
その羊飼い・エルゼアール・ブフィエは、たった一人で、どんぐりを十万個、地面をそのつど深く掘って埋めていた。
このうち二万本は芽が出、そのうち一万本は途中でだめになるだろうけれど、一万は育つだろうと語り、黙々と植え続けていた。


若者は、その後、第一次世界大戦に出征し、人々が破壊にばかり狂奔する姿をいやというほど見た後、戦争が終わって、ふとあの地はどうなったろうかと思って行くと、なんと多くのカシワの若木が育っていた。


年を経るごとに、どんどん緑は豊かになり、枯れ果てていた井戸は満々と水を湛えるようになり、ほとんど廃墟だった村は復興され、新しく多くの人がやってくるようになった。


誰もエルゼアール・ブフィエの功績を知らず、彼もまた誰にも自分からは語らず、ただ黙々とさらに樹を植え、育てるばかりだった。


やがて第二次大戦がやってくるが、ブフィエは木を植え続け、林は木炭をとるために伐採されたりもするが、それでもなんとか生き残り、また戦後はさらに豊かな土地になっていく…。


しかし、その背後には、どれほどの苦労と試行錯誤と失意や挫折があったか。


人知れず、信念を持って、木を植え続けたエルゼアール・ブフィエの生涯とその姿には、ただただ感動。


多くの人にぜひ読んでもらいたいし、また、本当の偉大さとは何なのか、教えてくれる、すばらしい絵本だと思う。