モリス・シュワルツ 「モリー先生の最終講義」

モリー先生の最終講義―「死ぬこと・生きること」

モリー先生の最終講義―「死ぬこと・生きること」



モリス・シュワルツの『モリー先生の最終講義』を読み終わった。
昨年の暮れの頃、たまたま、『モリー先生との火曜日』という本を読んで、とても感動した。
そしたら、十四年ぐらい前に、うちの母がこの本を買っているというので、本棚に長く置きっぱなしになっていたのをこの前見つけて、やっと今日読み終わることができた。
モリー先生との火曜日』もとても良い本だったが、この本もとても良い本だった。


モリー先生ことモリス・シュワルツさんは、もともとは社会心理学の大学の先生だったが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という少しずつ身体が身動きができなくなっていく病気になった。
その中で、求めに応じていろんな人に人生のエッセンスを語った。
それが大反響となり、これらの本になったそうである。


この本では、率直に、人間がいかに病気や死を受け入れ、いかに周囲の人と関わり、自分の人生と関わり、あるいはもっと高次の存在と関わっていくかについて、簡潔かつ深い提言のメッセージが書かれている。


静かに素直に人生の現実をあるがままに受け入れること。
時には感情、特に否定的な感情も自分の一部だと認めて、吐き出して良いこと。
そのうえで、気持ちを切り替えていくこと。


それらのことがはっきりと、きっぱりと勧めてある。


モリー先生のこれらの言葉の数々は、本当に深い諦観と智慧に満ちていて、読みながら、いろんなことを思いだし、そしてそのとおりだとうなずかせられた。


周囲の人々や物事に、できるだけ広く心を開いていくこと。
本当に共感できるものに惜しみなく心を開いていくこと。
そのことも、モリー先生が身をもって実践し、伝えてくれていて、とても心に響いた。


そして、他人に対する心構えと同時に、自分に対して親切にすることを明晰に書いてあるのには、とても共感し、考えさせられた。
自分自身に対してやさしくするのは、自分の親になるのと少し似ており、親が子どもに示すような忍耐と励ましと親切を自分自身に示すべきだというメッセージは、本当に成熟した人間の精神の高みを教えられた気がする。


自分が本当に興味を持っていることは何か。
自分はどんな人間になりたいか。


それらのことへの真摯な問いかけも、繰り返しこの本を読み直して、考えたいと思った。


自分を客観的に距離を置いて眺め、何が起こったか、どうしたら距離をおいて観察できるか、それから私は何を学べるか?を考えるということも、とても大切な智慧だと思った。


モリー先生との火曜日』とともに、繰り返し読んでいきたい本だと思った。
本当に稀有な達観と境地の本だと思う。