サンテグジュペリ 「星の王子さま」

星の王子さま (新潮文庫)

星の王子さま (新潮文庫)


もうだいぶ前に、別の訳で読んだことがあったのだけれど、今回この新潮社から出ている河野訳を読んで、「こんな話だったっけ?!」と深い新鮮な感動を味わった。


以前読んだ時は、有名な、「ものそのもの・ことそのこと」を見る、という話が印象的だったのだけれど、


今回読んで印象的だったのは、キツネとの対話で、「絆を結ぶこと」について語られるところだった。


絆を結ぶとは、その人やその物事に対して、長い時間を費やし、多くの注意や心をそそぐこと。
そして、そのように結ばれた絆があって、はじめてその人や物事が自分にとってかけがえのないものとなる。
そのかけがえのないものこそ、この世界に意味を与えてくれる。


このシンプルなメッセージは、しかしながら、あらためてとても考えさせられた。
本当にそのとおりと思う。
そして、とかくなんでも急がされ、インスタントなものが尊ばれ氾濫する現代の大人の社会では、いつの間にか見失ってしまいがちなことなのかもしれない。


その他にも、大人の世界を風刺した、王さまや実業家や飲んだくれたちの姿は、おかしくて笑えるのと同時に、本当にこんな風だよなぁとも思えた。


一説には聖書に次ぐ全世界的ベストセラーだそうだけれど、たしかにそれだけのすばらしい力のある作品だと思う。


ばらに対する王子の態度も良かったと思う。


五億の星が笑うというビジョンの美しさも、本当にすばらしかった。


また、折に触れて読み直したい。
そしていつか、自分の手で翻訳してみたいとも思った。