最近、南北戦争の頃の歴史の本を読んでいて、あらためてリンカーンに感嘆した。
南北戦争勃発当時、政府の財政はガタガタ、しかも税収の見込みもなく、膨大な戦費が必要になっていた。
奴隷制廃止にしても、世論は分裂し、憲法上の問題もあった。
要所要所で決断し、粘り強く指導力を発揮したリンカーンはやっぱりすごい。
南北戦争の前の頃、それまでアメリカの二大政党だったホイッグ党も民主党もそれぞれ分裂し、ノウナッシング党や自由土地党などの少数政党が出現していた。
ある意味、今の日本と似た状況かもしれない。
それをリンカーンが明確なビジョンと合意形成で共和党としてまとめあげていった。
維新の会はノウナッシング党みたいなもんだし、生活の党は自由土地党みたいなものだろう。
民主党の中に、リンカーンみたいなリーダーが現れれば、ホイッグ党の消滅から早期に共和党が立ち上がったように、民主党も再生再起できるのかもしれない。
が、現状、当分は難しそうである。
リンカーンも偉大だが、南軍のリー将軍も本当に立派な人物だと思う。
リー将軍のいろんな言葉を見ていると、本当に立派な言葉の数々で、深く考えさせられる。
一代の英傑というものは、のこす言葉も違うものだ。
特に、双方の側に忍耐と知恵があれば、南北戦争は避けられていたかもしれなかった、という意味のリー将軍の言葉を読んでいて、本当に考えさせられた。
リンカーンは相当に忍耐し、できうる限り戦争を回避しようとしていたとは思う。
ただ、後から言えば、特に南軍の側には、いろいろと工夫すべき点はあったのだろう。
南北戦争も一次大戦も、避けることができていたら、どれほど多くの人命の損失を回避できたことだろう。
すべては後知恵になりがちだが、一時の激昂に駆られると、人は大体ろくなことにはならない。
地味で退屈な平和を、いかに最大の忍耐と知恵でつくりだすかが、本当は一番偉大なことかもしれない。
もっとも、リンカーンは、戦争を避けるために最善の努力をなし、かつその後で、よく最大の努力で戦争を遂行したと思う。
当時、なぜ黒人奴隷のために戦争をしなければならないのかと、リンカーンを批判する北部の人が多かったそうだ。
そうした腐った平和主義者には、断固として屈しなかったところも、リンカーンの偉大さの一つだと思う。
できうる限り戦争を避けるための努力をしつつ、本当に重要な正義のためには決して屈することなく闘うという勇気を持つことは、本当に至難の業だ。
人は往々にして、どちらかを忘れることに傾きがちだ。
第一次大戦の歴史と同様、南北戦争の歴史も、本当に現代人にとって教えられるところの多いものだと思う。
どうも日本人には一次大戦の歴史も南北戦争の歴史も、両方ともなじみがうすいけれど、実はこのあたりの歴史に暗かったことが、二次大戦の日本の敗因の一つだったのではないかと思う。
歴史というのは、汲み取るべき知恵に満ちた宝庫。
幕末史や二次大戦も大事だが、この二つも、折々眺めることができたら、より後世の我々が少しは賢くなり、先人の苦労を無にすることなく済むよすがになるのかもしれない。