雑感 吉田茂について

吉田茂を後世の観点から批判することは簡単にできるだろうし、それが必要な場合もあるだろう。
しかし、焦土と化した敗戦後の日本において、「大過なく」復興を成し遂げ、曲りなりに主権を回復するのは、今からでは想像ができないほど大変なことでもあったろう。
傍観者と当事者は苦労が違うことだろう。


祖母に戦後の歴代首相について生前聞いた時、吉田茂についてだけは「あの時代は吉田さんじゃなければできなかった」と言っていたことをふと思い出した。
他の人にはあんまり思い入れも共感もなく、そういえばそんな人もいた、ぐらいだったけれど、吉田茂には一種の共感があったようだった。


小林秀雄も、短いエッセイの中で、吉田茂についてあの難局を「大過なく」乗り越えただけで、ものすごいことだと論じていた。
同時代を生きた人にはよくわかる実感が、後世にはよくわからなくなることもあるのかもしれない。


吉田茂も当時はボロクソ言われていたし、今後もいろいろ言われるだろうが、難局を大過なく乗り越えたことは、とにもかくにも高く評価されるべきだろう。
後世から後知恵で批判するのは、誰でも簡単にできることではないか。
もっとも、吉田ドクトリンが今の時代に合わないということは別の話だが。