小沢派への疑問

私が疑問なのは、原発再稼働反対・消費税増税賛成というスタンスの人が非常に少ないことだ。
原発再稼働反対の人は消費税増税反対の人が多い。
逆に、原発再稼働賛成の人は消費税増税も賛成の人が多い。
本来は全く別個の事柄なのに、賛否がこうも割れるのは、55年体制と変わらない。


消費税増税反対の人に聞きたいが、それでは、2033年には破綻すると言われている年金制度をどうやって支えるのか。
膨れ上がる社会保障をどうやって支えるのか。
答えは、社会保障を圧縮するか、国債の乱発しかない。
しかし、消費税増税反対の人で、福祉切り捨て派は少ない。
小沢派は特にそうだ。


小泉政治を批判してばかりいる人々が、消費税増税にも反対ばかりしているというのは、要するに、無責任に何でも反対しているということではないか。
国債の乱発はギリシャ危機の二の舞への道だという想像力が欠如している。ギリシャ危機はそれらの人々にとって、対岸の火事、あるいは見えてない。


原発再稼働の見切り発車には私は非常に疑問があるし、反対だし、野田政権ははっきりと脱原発の中長期的政策を打ち出すべきと思う。
だが、消費税と原発再稼働で野田政権を叩きのめしている人々は、財政や社会保障で対案があるのか甚だ疑問だ。
無責任に何も考えてない破壊主義ではないか。


そもそも、野田政権を叩きまくって滅ぼしたとして、次の選挙で維新の会と自民の連立政権ができたとして、いったい野田政権よりも良い政治が実現する保証はあるのだろうか?
福祉の切り捨てが進み、しかも原発ムラが自民と結びついて復権する可能性は大きい。


対案を出さずになんでも反対し、先のことを考えないという点で、小沢派は実に55年体制下の社会党とよく似たメンタリティ、つまり無責任野党のメンタリティそのものと思う。
野党ならばそれでもいいが、与党の一員だという自覚はあるのか。
議員も支持者も社民や共産党に移籍すればいいのに。


デフレ下の消費税増税に反対と言っている人々は、一度でいいから野口悠紀雄さんと藻谷浩介さんの本を読んで欲しい。
今の日本は所謂「デフレ」ではない。
低い物価傾向は通貨供給量の問題ではない。
要素価格均等化と生産年齢人口減少の問題である。
これらは今後も基本的には変わらず続くことである。


菅政権が続いていれば、安易な原発再稼働はしなかったろう。
消費税増税については軽減税率を工夫し、ギリシャ危機の二の舞を避けるためだと何度も国民に直接、記者会見やブログで語りかけたろう。
そう思われる。あと一年菅政権が続いていれば、今の状況もだいぶ違っていただろうと思えてならない。
無責任な菅降ろしに走った小沢派の罪は極めて大きい。


ある種の小沢派が、小沢さんにとってネガティブな記事のことになると、あらゆる記事をすべて陰謀や謀略だとして特に証拠もあげずに否定するのに、菅さんのことになると何の根拠もない誹謗中傷を鵜呑みにして垂れ流すという、あのダブルスタンダードは何なんだろう。


また、彼らは、構造の問題というものが何も見えておらず、個人への誹謗中傷に明け暮れる点が実に愚かしい。


柳田邦男さんが文藝春秋六月号に書いていた『原発事故 失敗の本質 保安院「消せない罪」』を彼らには一度でいいから読んで欲しい。
http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/355 
この記事には、2006年に保安院が、安全委がIAEAの新基準をもとに30キロ圏内の避難訓練を実施しようしたのを、つぶしたということが明確に書かれてある。


柳田さんが指摘するような、保安院の「消せない罪」や構造的な問題をまったくほったらかしにして、菅叩きに明け暮れている人というのは、本当にどこまでものが見えない人なのか。
大事なのは、このような事態を生じさせた構造の問題を的確に把握し、変えることだ。


また、同じ文藝春秋の六月号の中で、湯浅誠さんが、個人としての橋下さん自身と、社会的現象としての「橋下現象」は一応区別して考えるべき、ということを述べていて、考えさせられた。
橋下さん個人はそれなりに良いところもある一人の人間なのだろうが「橋下現象」は相当に深刻な現象だ。
次の選挙では、必ずこの「橋下現象」が大きな台風の目になる。
そのことを全く見ずに、菅叩きに明け暮れ、今度は野田潰しに明け暮れている小沢派とは、いったい何を見て、何に責任を持っているのだろうか。


前掲の対談の中で、湯浅さんが、小沢さんと橋下さんは主張にひとつ共通点がある、それは、国家の役割を縮小し、地方や個人に降ろしていく、そうすれば国の財政負担はずっと減る、という主張をしていることだと指摘していた。
この点たしかに二人は似ている。
そして、それで日本が良くなるかは、湯浅さんと同じく、私も大きく疑問である。


先のことも考えず、相も変らぬ菅叩きや野田潰しに明け暮れて、それで何か良いことでもやっているかのように勘違いしている小沢派とは、本当にいったい何なのだろうかと思う。