梁塵秘抄より

阿弥陀仏と申さぬ人は淵の石、劫は経れども浮かぶ世ぞ無き。」

「弥陀の御顔は秋の月、青蓮の眼は夏の池、四十の歯ぐきは冬の雪、三十二相春の花。」

「眉の間の白毫は、五つの須弥をぞ集めたる、眼の間の青蓮は、四大海をぞ湛へたる。
 眉の間の白毫の、一つの相を想ふつべし、須弥の量をたづぬれば、縦横八方由旬なり。」

「極楽浄土は一所、つとめなければ程遠し、我等が心の愚かにて、近きを遠しと思ふなり。」

「極楽浄土のめでたさは、一つもあだなることぞなき、吹く風立つ浪鳥も皆、妙なる法をぞ唱ふなる。」

「極楽浄土の宮殿は、瑠璃の瓦を青く葺き、真珠の垂木を造りなめ、瑪瑙の扉を押し開き。」

「我等が心に隙もなく、弥陀の浄土を願ふかな、輪廻の罪こそ重くとも、最後に必ず迎へたまへ。」

「弥陀の誓ぞ頼もしき、十悪五逆の人なれど、一たび御名を唱ふれば、来迎引接疑はず。」

「暁静かに寝覚して、思へば涙ぞおさへあへぬ、はかなくこの世を過ぐしても、いつかは浄土へ参るべき。」