- 作者: ソポクレス,藤沢令夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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- 作者: 藤沢令夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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エディプス・コンプレックスの語源として、ストーリーは知らない者はいない著名な作品。
話のあらすじはもちろん私も聴いたことはあった。
しかし、実際に読んでみると、想像以上に本当にすごい作品だった。
圧巻。
悲劇の神髄、名作中の名作と言えようか。
たとえて言うならば、ミケランジェロの彫刻はすごいけれど、なおその上をいく奇跡のような作品にラオコーンがあるように、シェイクスピアの悲劇はすばらしいけれど、なおその上をいくのがソポクレスの『オイディプス王』と言えようか。
ラオコーンといい、『オイディプス王』といい、古代ギリシャのすごさにはただただ驚嘆する他はない。
さまざまな天災に見舞われるテーバイの様子が、読みながら今の震災と原発事故に苦しむ日本に重なって見えて、それで一層感情移入しながら読めた。
シェイクスピア劇が、劇のストーリーだけでなく、その中に散りばめられる無数の格言や台詞が何よりも面白く心に残るのと同様に、ソポクレスの『オイディプス王』もその中にいくつも印象深い台詞がある。
「堪えるに難き苦しみも、正しきかたへとなり行くならば、すべて幸いに終わるであろう」
「この地(くに)には、ひとつの汚れが巣食っている。
さればこれを国土より追いはらい、けっしてこのままその汚れを培って、不治の病根にしてしまってはならぬ。」
「人がおのれの持つ力によって、世のためにつくすのは、何よりも美しいつとめであろうに」
「わが内に宿る真理(まこと)こそ、この身を守る力なのだから」
「ただ、不確かな憶測により、勝手に罪を着せるのだけは、やめていただきたい。
故なくして悪人を善人とみとめ、善人を悪人とみなすのは、共にこれ正しからざるところ」
「げに何ごとも、潮時が大切」
不確かな憶測により、勝手に人を罵倒するのをやめて、原子力政策のありかたを見直し、不治の病根とならぬように、この国のありかたそのものを改めていくことが、これからの日本はできるだろうか。
そんなことを考えさせるのも、この作品が並外れたパワーと新鮮さを持つからなのだろう。
話しの筋は知っているから、などという思い込みは捨てて、一度は読んでみるべき作品と思う。