
- 作者: J.S.ミル,竹内一誠
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/07/16
- メディア: 文庫
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あらためて読んでみて、とても良い本だと思った。
個別の職業訓練や技術ではなく、
「有能で教養ある人間を育成すること」、
つまり「自然と人生について大局的に正しい見方」をできる人間を育てることこそ、
ミルは大学教育だと真っ向から説く。
全くそのとおりと思う。
「われわれは、絶えず、あるなんらかの事柄について何が本当に真実であるかを知る必要があります。」
(62頁)
「自分がまったく関与しなければ、また何の意見ももたなければ害になるはずがないという錯覚で自己の良心をなだめることはやめましょう。悪人が自分の目的を遂げるのに、善人が拱手傍観していてくれるほど好都合なことはないのです。自分の代理人によって、しかも自分が提供した手段が用いられて悪事側行われているにもかかわらず、そんなことに心を煩わしたくないという理由で、何の抗議もせず、黙認するような人間は善人ではありません。一国の行為が、国内的にも対外的にも、利己的で背徳的で圧制的であるか、それとも合理的かつ啓発的で公正にして高貴であるかは、公的な業務に絶えず注意を払いその細部にまで目を配る習慣がその社会にあるかどうか、またその社会がそうした業務に関する知識と確実な判断力とをどの程度持ち合わせているかによることでしょう。」
(102頁)
といった言葉には、本当に共感した。
また、他の人の精神や他の社会を理解し学ぶためには、その国や社会の言葉を学ぶ必要がある、ということも、全くそのとおりと思った。
いろいろ、細部に、啓発される内容をたくさん含んだ本だと思う。
また、大学教育とは、
「諸君が人生に対してますます深く、ますます多種多様な興味を感ずるようになる」
ということだというのも、そのとおりと思った。
さらに、大学における政治学教育について、なんらかの見解を教えるものではなく、
「自分自身で考えるための材料を提供し、その材料の利用の仕方を教えること」
だというのも、なるほどと思った。
大学教育にたずさわる人に限らず、大学教育をいま受けている人、あるいはこれから受ける人、あるいはもう受け終わった人、もしくは大学とは直接は関係ない人も、みんな何かしら、教育や知識のありかたについて、参考になることが書いてある本なのではないかと思う。
短いが、深い一冊。