- 作者: ウィリアムシェイクスピア,William Shakespeare,福田恒存
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1974/01/30
- メディア: 文庫
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高校の時に読んで、今回久しぶりにしっかり読み直した。
前読んだ時はリチャード三世の悪逆ぶりが印象的だったけど、読み返すと、マーガレットをはじめとした夫や子を殺された女性たちの悲しみや呪いの言葉が印象的。
結局それらが実現してリチャード三世も滅びた。
薔薇戦争の泥沼の内戦の中で、誰もが罪人だったんだろうけれど、それらの罪に対する罰の道具のようにリチャード三世が悪逆の限りを尽くし、そして自分自身も時が来るとあっけなく滅びていく様子が、なんとも無常を感じさせられる。
あと、系図を見ていてあらためて印象的だったのは、リチャード三世に殺されたかわいそうな小さな男の二人の姉さんのエリザベス、つまりリチャード三世の姪が、ヘンリー八世の母親に当たるということ。
この作品の中で、リチャード三世を倒すリッチモンド伯が、要するにヘンリー七世で、八世の父親なわけである。
リッチモンド伯とともに挙兵するバッキンガムが、ヘンリー八世に粛清されるバッキンガムの父親なのだろう。
いろいろと歴史の因果の糸車はつながっているわけだけど、非常に緊縛した筆致で、薔薇戦争のクライマックスの悲劇を描ききっているシェイクスピアは、やっぱり天才とあらためて思った。
また、一つ一つの言葉が、本当に映像的というか、生き生きとしてビジョンが目に浮かぶような言葉の数々で、感心。
神は細部に宿るというが、リチャード三世の中の細部のセリフが、細かく見ていくと、本当にどれも興味深かった。
あらためてまたシェイクスピアにはまってしまう作品である。