とても深いメッセージの、人生についてあらためて問い直させる本だった。
本書は、著者の柳田さんの次男の洋二郎さんが、自殺を図り脳死状態になり、亡くなるまでの十一日間のことについて書かれている。
洋二郎さんは中学時代に目に大きな傷を負った出来事がきっかけとなり、神経症や対人恐怖症に十二年間苦しみ、その中で必死に生きようと努力したが、最終的には25歳の時に自死の道を選んだという。
洋二郎さんのありし日の話は、どれもとても生き生きとしていて、本当に深く人生や生きるとは何か考えさせるエピソードが多かった。
そして、自死の試みのあと脳死となった洋二郎さんが、骨髄ドナーに登録していたことから骨髄移植を実現させてあげようと柳田さんが考えて医師に相談し、骨髄の移植は実現できなかったが、腎臓移植を決断し実現したことには、本当に胸を打たれるものがあった。
「一人の人間が死ぬと、その人がこの世に生き苦しんだということすら、人々から忘れ去られ、歴史から抹消されてしまうという、絶対的な孤独」
(21頁)
たしかに、人間には、このような悲しみや孤独があるのかもしれない。
しかし、そうであればこそ、人生の残りの時間をいかにして納得できる意味のあるものにするか、そのためにどうやってお互いに助け合うか、
そして、この人生は、「名も知らぬ人間の秘かな自己犠牲」に支えられているのではないか、そのことにどれだけの想像力や感受性を持つことができるか、
そうした、人生の深い深いテーマに、この本は気付かせ、思いを致させてくれる。
「まっすぐにこれから受けとめていく」
「魂の再生」
「より良く死ぬこと」
そうしたこの本の中の言葉が、とても胸に響き、印象に残った。
私も大切な家族を亡くしたことがあるので、著者の柳田さんのメッセージや物語は、他人事には思えない、深く胸に響くことだった。
人生とは、生きるとは、いのちとは、
そして、脳死とは、臓器移植とは。
それらについて、深く考えさせられる、本当に「魂の本」と言ってよい、貴重な一冊。
多くの人に一度は読んでもらいたい。