- 作者: 重信房子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2005/07
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 3回
- この商品を含むブログ (12件) を見る
この本は、重信房子の短歌を集めたもの、つまり歌集である。
読む前に思っていたより、ずっと良かった。
思わず、ジーンと心打たれる歌があった。
この本は、そこに盛られた素材のすごさという点からいっても、現代日本に生まれた歌集の中でも稀な本だと思う。
パレスチナの戦場でのことを詠んだ歌や、獄中での暮らし、学生運動の思い出の歌。
私が特に、心動かされたのは、
「世界中 敵になっても お前には 我々が居ると 父の文あり」
という一首だった。
重信房子の父親は、若いときは血盟団で西田税の盟友でもあった人らしいけれど、重信房子が日本赤軍として中東の地に渡ったのち、マスコミや世間からの糾弾や嫌がらせはひどく、脅迫電話や苦情もずいぶんあったそうだ。
だが、一度もそうした脅迫電話や嫌がらせに屈しなかったそうである。
他の歌にも、重信房子の、両親との深い絆と信頼を偲ばせる歌があって、良い親子だったのだろうなあと思った。
また、その他に、戦友や、パレスチナの人々への深い愛情をうかがわせる歌も多々あった。
あと、個人的に、ちょっと気になったのは、小さい時を回想した一首。
「花御堂 つまさき立ちて 甘茶かけし 春爛漫の 桜降る寺」
このお寺は、どこのお寺だったのだろう。
この歌などを読むと、重信房子さんは、左翼か右翼かというつまらない枠を超えて、和歌の心に連なるという意味で大和魂の持ち主だったのではないかという気がしてくる。