平塚 柾緒 「図説 東京裁判」

図説 東京裁判 (ふくろうの本)

図説 東京裁判 (ふくろうの本)

東京裁判について、多くの写真入りでわかりやすくまとめてあって、面白かった。

そうだったのかとあらためて思わされたのは、巣鴨拘置所があった場所は、いまのサンシャイン60ビルということ。
巣鴨の刑場跡は東池袋中央公園になっていて、「永久平和を願って」という碑文があるとのこと。
いつか訪れてみたい。

また、興亜観音は伊豆にあるということ。
長野には、「七光無量寿之墓」というのもあるらしい。
機会があったら、訪れてみたい。

1068人。
ABC級すべてあわせると、戦犯として処刑されている。

その人数を多いと見るか、少ないと見るか、人によって、あるいは国によって、判断や感じ方が異なってくるのかもしれない。
しかし、千人以上も日本は戦争の責任をとって殺されたのに、アメリカは原爆投下で誰一人として処刑されていないということを考えると、なんとも正義はどこにあるのだろうという気持ちになってくる。

東京裁判においては、パール判事の反対意見書が有名だが、オランダのレーリンク判事やフランスのベルナール判事も、東京裁判の公正さへの疑問を持ち、判決の問題を指摘している。
レーリンク判事やベルナール判事の判決書もいつか詳しく読みたいものだ。

東京裁判は、いまもって、重い歴史なのだなあと思う。
決して、「多数決で決まったからいまさら文句を言うな」とか、「戦後六十年以上経ったから今更文句を言うな」などという言葉で片付けられるものではないだろう。
ある意味、現在進行形の影響を投げかけている事柄だと思う。

興亜観音のすぐ横にある「七士之碑」というA級戦犯として処刑された七名の墓碑の碑文は、吉田茂が書いている。
吉田茂は、戦時中は東条英機とは随分対立もしていたし、戦後は対米従属外交を行った人間だけれど、きちんと七士之碑を書いているところに、なんというか、胸打たれるものを感じる。

吉田ドクトリンは対米従属外交と歴史上では言えるかもしれないし、後世のその継承者たちによってずいぶん日本の外交も基地問題も惨憺たるものになっているが、吉田の心底には、臥薪嘗胆でやむを得ず対米屈従をしているけれど、決して魂までアメリカに売りさばいたわけではないという痩我慢の精神があったのだろうと、七士之碑のことを考えると思える。

東京裁判とどう向き合うかということ、および東京裁判とかつての戦後の日本人たちがどう向き合い、その何を継承し、何を批判的に吟味するかということは、今日においても、きわめてアクチュアルな、大事な問題なのかもしれない。

そうしたことを考えるのに、良い一冊だったと思う。