- 作者: 色川大吉
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1995/10/01
- メディア: ハードカバー
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多くの自由民権運動に関わった人々の、屈曲に満ちた人生の数々を描いている。
晩年結局普通選挙運動に反対して国家主義に走ったような人々の様子。
一方で、「恩賜的民権」を批判して「恢復的民権」を主張した中江兆民や、自由民権運動の最良の部分を内面化した北村透谷の「内部生命論」など。
後世に受け継がれ、本当に生き残るものは何か。
自由民権運動についてあらためて考えさせられた。
著者が言うには、「主観的な意識と客観的な意味のズレ」を明らかにするのが、歴史・精神史の大事な役割とのこと。
深く考えさせられる。
また、「頂点的思想と底辺の意識」、支配的思想と民衆の意識の両方の解明が精神史の課題という。
精神史とは、現実に活動している人間について、生活過程と内的動機について着目して解明するということだそうだ。
「人間発掘」、そして「最下流の人民」に着目し、それによって「地底の大江」に連なるという、精神史の提唱は、今読み直しても、とても大事なメッセージのように思えた。
歴史と文学について、「歴史の縛」と「生きた形象」の二つのバランスについての文章も、本当にむずかしいなあと改めて考えさせられた。
面白い一冊だった。
いつかもっと丹念に読もう。