池田晶子・大峯顯 「君自身に還れ―知と信を巡る対話」

君自身に還れ 知と信を巡る対話

君自身に還れ 知と信を巡る対話

だいぶ前に読んだのだけれど、なかなか面白かった。

タイトルは、フィヒテの、

「君自身に還れ。
君の外にあるものすべてから目を向け変えて、自分の中へ還れ。
これが哲学というものが哲学者に対してするところの第一の要求だ。」

という言葉からとのこと。


本当の言葉を求めるということ。

言葉は価値そのものであり、価値を成り立たせる基本的な基盤であること。

などなど、読んでいてなるほどと思うことが書いてあった。

池田さんは、はじめのうちは浄土真宗についてよくわかっていなかったみたいで、世間一般の人によくあるような誤解や質問をしている。
しかし、さすが鋭い方で、大峯先生の答えがどれも明晰で鋭いこともあり、対話の終わりの方では、浄土真宗のすごさを池田さんもかなり理解されていたようだ。
ただ、本当に惜しまれるのは、池田さんがその後急逝してしまったこと。
この対話の中で、十年経ったらわかりますよ、わかりますかー、みたいな話をしていたのに、その後それだけの時間はぜんぜんなかったことを思うと、老少不定や無常ということをあらためて考えさせられる。

できればその続きも読みたかったが、いまあるこの一冊は、浄土真宗の外部の人にとって、浄土真宗の信心の世界がいかなるものかについてのとても良い入り口になるのではないかと思う。

本当のことや、本当のことばに飢えている人には、一度はざっと目を通して欲しい本だ。