阿波根昌鴻 「反戦と非暴力」

反戦と非暴力―阿波根昌鴻の闘い

反戦と非暴力―阿波根昌鴻の闘い


写真や文章で、わかりやすく阿波根昌鴻さんの生涯がまとめてあって、面白かった。

大まかなことは、少しは知っていたけれど、この本を読んで、これほど大変だったのかと、あらためて胸を突かれる思いだった。

伊江島における、島民の人々の、戦時中の筆舌に尽くしがたい受難と、そして戦後長く続く米軍の横暴との非暴力不服従の闘いは、現代の語り継がねばならない最も重要な歴史と物語なのかもしれない。

伊江島の島民の土地を勝手に接収し、暴力を振るい、ブルドーザーで家屋を壊し、田畑を焼き払い、強姦や暴行を繰り返す米軍の話を読み進めるうちに、こんな米軍の頭目である米大統領に対して、基地問題もまだ解決していないのに、「根っからの親米派」などと以前わが国の首相で言っている人がいたけれども、そう言うことがどれほど人として恥ずべきことだったか、あらためて痛切に感じざるを得なかった。

そのような中で、長く苦しい闘いを、ひたすら非暴力と不服従で闘い続けた阿波根昌鴻さんの智慧と勇気は本当に驚嘆させられる。

若い頃、阿波根さんは内村鑑三一燈園西田天香の影響を受けたということや、良寛が好きだということ、などはこの本ではじめて知って、とても興味深かった。

阿波根昌鴻さんが常に座右の銘にし、非暴力の闘争で掲げた言葉は「非理法権天」だったという。

この本の中では、誰の言葉ということは書かれず、東洋の古来の言葉とされて、どんなに強い者や強い国も、道理のないことをして天に背けば、必ず滅びる時が来る、という意味だと解説されていたけれど、

この「非理法権天」は、もちろん楠木正成が掲げた言葉だ。

思えば、本土の人間が、皆アメリカに見苦しく屈従してどうしようもない醜い有様をさらす中で、阿波根昌鴻さんの魂の中にこそ、楠木正成などから脈々と受け継がれる、東洋の道義や気高い魂が受け継がれ本当に生きた姿を示してきたということなのかもしれない。

阿波根さんの他の本も、もっと読もう。

この魂、忘れてはならぬと思った。