小林よしのり 「沖縄論」

新ゴーマニズム宣言SPECIAL 沖縄論

新ゴーマニズム宣言SPECIAL 沖縄論


この本を読んで、小林よしのりほど誤解されている人はあんまりいないのではないかと思えた。

この本の中で、小林よしのりは、はっきりと日米地位協定の改正を主張している。
さまざまな米軍による暴行などの犯罪行為を指摘し批判している。
沖国大ヘリ墜落事件における米軍の現場封鎖や傲慢無礼な態度へも憤慨し、批判している。
自民党親米保守の見苦しい隷属姿勢を批判している。
普天間基地辺野古移設も反対している。

左派系の人からは、しばしば蛇蝎のように嫌われているし、ネトウヨの教祖のように思われているようだけれど、見苦しいほどアメリカには無批判で中国韓国への悪意や悪罵のみを書き連ねるネトウヨや、アメリカへのなんの誇りもない隷属しか能のない自民党やその支持者よりは、小林よしのりははるかに節義のある人物と思う。

瀬長亀次郎について一章を割いて称揚し、瀬長こそが本当の愛国者だったと述べているのは、まったく共感したし、そのとおりと思った。

自称愛国者ネトウヨ諸君は、せめてこの小林よしのりの「沖縄論」を読むべきではなかろうか。
本土のエゴで沖縄にのみ基地負担を押し付けるのが、いかに醜く恥ずべきことか、小林よしのりが舌鋒鋭く喝破しているのを読めば、鳩山民主党がダメだから再び自民党を支持しよう、などという単純な話にはならないのではないかと思う。

ただ、小林よしのりがかつての社会党的左翼と相容れないのは、小林よしのりは沖縄の基地負担軽減と同時に自衛隊の強化による自主防衛をはっきりと主張していることだろう。
しかしながら、私もそのことは基本的に正しいと思う。
これからの日本の対立軸は、「対米依存・沖縄への負担押し付け・軽武装」と「対米依存脱却・沖縄の米軍基地負担軽減・自主防衛推進」の二つの間で行われるべきと思う。
55年体制下での、「対米依存・軍拡」の自民党路線と、「対米依存脱却・非武装」の社会党路線は、結局不毛な平行線の上に、日本の自主性も沖縄の負担軽減も何ももたらないのではないかと思う。

とりあえず、偏見は脇にして、右派も左派も読んでみてもいい本ではないかと思う。