小林よしのり 「脱原発論」

ゴーマニズム宣言SPECIAL 脱原発論

ゴーマニズム宣言SPECIAL 脱原発論


小林よしのりさんは、とかく毀誉褒貶のある人物である。
ただ、面白いのは、単純な左右や保守・リベラルのステレオタイプな枠におさまりきらないところだと思う。


この本で、明確に原発を批判し、「原発は嘘と利権と危険物質でできている」とまで言い切っている。


そして、原発推進擁護の「自称保守」の人々を徹底批判している。


ホルミシス効果やICRPの基準についての批判も興味深かった。
また、トロトラスト被害の話は私は恥ずかしながらよく知らなかったのでとても興味深かった。


細部にはいろんな異論もあるのかもしれないが、「高レベル放射性廃棄物」つまり核のゴミが、再稼動すればするほどできてしまい、とても手に負えないことを指摘していることは、まともに事実を直視するならば誰しもが同意することではないかと思えた。


また、岩佐嘉寿幸さんの訴訟の話も、あまりに気の毒で、なんとも胸が詰まった。
原発労働者の被爆は、一節には四十万人にのぼるという。
三一一が起こる前から、原発労働者の過酷な労働環境があったことを、私たちはあらためて認識すべきなのだろう。


進歩主義の幻想を捨てること。
分散型の電力供給、つまり地産地消型の電力をめざし、送電ロスをなくすべきこと。
原発潜在的自爆核兵器であり、国防上最も危険であること。


などは、全く同感だった。


細部についてはさらに検討を要するところや、必ずしも私は同意しないこと、あるいは判断を保留する部分もあるけれど、上記の点では共感したし、漫画であるため読みやすく、小林よしのりアレルギーを持つ方も、意外と読んでみたら共感する部分もあるのではないかと思える。