渡辺 喜美・江田 憲司 「脱官僚政権樹立宣言」

みんなの党」の渡辺喜美さんと江田憲司さんの対談。
とても面白かった。
両氏の改革への熱意と志がよく伝わってきた。

両氏は、今の日本のガンは「官僚の既得権益」だと明確に指摘している。

この官僚支配、つまり「1940年体制」からの転換こそが、今の日本の喫緊の課題だと主張。

日本経済回復のための成長戦略も、タテ割り行政に縛られない発想や人材による、大胆で柔軟な政策こそが必要だと述べて、さまざまに提起している。

江田さんが橋本龍太郎政権の懐刀だった頃の体験談がなかなか生々しく面白く、橋本さんを苦しめる官僚達の姿に、官僚とはこんなにも狡猾で恐ろしいものかと改めて唖然とするばかりだった。
中でも、衝撃的なのは、山一證券の自主廃業は、財務省金融庁に分割されることを止めるために、当時の大蔵官僚が橋本政権に打撃を与えるために仕組んだことだったという説。
一国の経済よりも自分たちの省益や既得権益を守るためにあらゆる手段を辞さなかったとすると、霞ヶ関の官僚というのは本当に日本のガンとしか言いようのないものだと思う。

脱官僚への、この二人の熱意と志は本物と思うし、大いにがんばってもらいたいと思った。

ただ、

脱官僚か親官僚か
地域主権か中央集権か
・生活重視か利益集団重視か

という対立軸を、この両氏は提示しているし、私も前者を支持するのはもちろんなのだけれど、この対立軸だけで今の日本の抱えている問題が尽せるのかという疑問はある。

特に、社会保障の問題について、あんまり両氏が具体的に述べていないのが気になる。

社会保障個人口座をつくることと、寄付税制を工夫することを通して、「愛の自由社会」を目指す、ということはたしかに言われているのだけれど、それだけで本当に社会保障の充実や安心につながるのかは疑問である。

また、沖縄や日米安保の問題をどうするかはほとんど関心がないようで、おそらくはせいぜい橋本政権頃の自民党の方針に回帰するのみのような気がする。

さらに、議員定数削減を主張していることは良いとして、比例代表制を廃止することを述べているのは、本当にそれでいいのかとかなり疑問である。

上記のような諸点において、みんなの党は本当に大丈夫か、日本のためになるのか、足りない部分があるのではないか、という疑問もあるけれども、ただ、霞ヶ関支配の打破に関しては、大いに期待できる政党なのではないかと思った。

ただ、江田さんは、どうも昔の新党さきがけを高く評価して、再びそのようなポジションを連立政権で目指しているようである。
さきがけをどう評価するかは微妙なところだが、自民の安易な復権に手を貸すことだけはやめて欲しいと思った。

次の参院選で「みんなの党」に投票してもいいか。
まだ私の中では最終的な判断はつかないが、比例区においてのみ、官僚支配の打破への期待を託して、場合によっては投票してもいいかなぁとちょっと思えた本だった。

(2010年6月記す)